ナルコレプシーの症状、原因と治療【専門医監修】

病気を調べる 2017年04月21日(金)

ナルコレプシーの症状、原因と治療【専門医監修】

ナルコレプシー

ナルコレプシーとは

ナルコレプシー(narcolepsy)は、脳の覚醒中枢の働きが低下することによって、起き続けていることができずに眠り込んでしまう中枢性過眠症のひとつです。睡眠発作といって、日中に突然、強い眠気を覚えて居眠りをせずにいられなくなります。

ナルコレプシーにかかっている人の割合は、欧米では0.02~0.04%ですが、日本では0.16~0.59%と高くなっています。10〜20代で発症することが多く、14~16歳がピークとなっています。注1)

ナルコレプシーは家族間の発症が多く、遺伝的素因があることがわかっています。白血球の血液型であるヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen; HLA)の型と密接な関係があり、ほぼすべての典型的な患者さんでHLAのハプロタイプに共通の特徴がみられます。

ナルコレプシーの症状

ナルコレプシーの中心となる症状は睡眠発作ですが、これに情動脱力発作(カタプレキシー)、入眠時幻覚、睡眠麻痺を合わせて4主徴といいます。ナルコレプシーの典型例では睡眠発作に情動脱力発作を伴うことが多く、4主徴がすべて現れるのは患者さんの一部に限られます。

睡眠発作

ナルコレプシーでは、朝起きたときの眠気は健常者とほぼ同じであるものの、その後眠気が強くなり、昼前から午後にかけてより眠気が強くなります。居眠りは断続的に数回起こりますが、時間は数分~15分程度と短く、居眠りの後に眠気がとれてすっきりすることもあります。しかし数時間後には眠気が再び高まり、居眠りを繰り返します。このような耐えがたい睡眠発作が3ヶ月以上にわたって繰り返し続くことがナルコレプシーの特徴のひとつです。

情動脱力発作(カタプレキシー)

典型的なナルコレプシー特有の症状のひとつに、怒る、大笑いをする、びっくりするなど強い感情の動きがあったときに、急にがくんと力が抜けてしまう情動脱力発作(カタプレキシー)があります。多くの場合、持続時間は数秒から長くても1~2分程度です。膝や下半身全体の脱力で腰から崩れ落ちたり、全身の脱力のためにその場で倒れてしまうこともあります。顔面の筋肉が脱力すると、ろれつが回らなくなったり瞼が開かなくなったりすることもあります。これらの症状は、覚醒時にレム睡眠(下記)が挿入されることにより起こると考えれています。また、情動脱力発作を伴わないタイプの非典型的なナルコレプシーも存在します。

入眠時幻覚

多くの場合は眠り始めに夢を見る程度ですが、ときには人影や動物などのはっきりとした幻覚を見たり、幻聴が聞こえたりするほか、浮遊感を生じることもあります。入眠時だけでなく、寝起きや昼間に短時間の居眠りをしたときにもみられます。入眠時幻覚は、ナルコレプシー以外に寝不足でも生じることがあります。

睡眠麻痺

眠り始めや目が覚めるときに、いわゆる金縛りの状態になります。何か重いものがのしかかっているような感じで手足を動かすことができず、声も出せなくなります。周囲に人の気配や人影を感じることもあります

入眠時幻覚と睡眠麻痺を合わせてレム睡眠関連症状ともいいます。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、レム睡眠時には脳が活動して夢を見ていますが、一方で手足などを動かす骨格筋は脱力して休んでいる状態にあります。金縛りで意識があるのに身体を動かせないのはレム睡眠の特徴のためで、健康な人にもこれらの症状は起こります。

上記のように、ナルコレプシーはレム睡眠が、眠りについた時に生じやすく(通常は入眠時にはレム睡眠は生じません)、また、情動が強く動いた時には覚醒時にも一瞬生じてしまうこと(カタプレキシー)が特徴です。

ナルコレプシーの原因

脳の視床下部外側部にある神経細胞には、オレキシン(ヒポクレチン-1)という神経ペプチド(アミノ酸結合物)を産生するオレキシン神経細胞が含まれています。オレキシンは他の神経伝達物質の働きを通して睡眠と覚醒のタイミングをコントロールしています。情動性脱力発作を伴うナルコレプシー患者さんの90%に脳脊髄液中のオレキシンAの濃度低下がみられることから、オレキシン神経細胞が何らかの原因によって失われた結果、睡眠と覚醒の切り替えがうまくいかなくなり、睡眠発作などの症状が起こっているのだと考えられます。注2)

ヒト白血球抗原(HLA)の型を調べると、ナルコレプシーの患者さんではHLA -DR2/DQB1 *0602陽性を示しています。このことから、HLAに関連する自己免疫の働きによってオレキシンを含む神経細胞が破壊されると考えられています。ただし、日本人全体の12~38%の人も陽性であるため、HLA -DR2/DQB1 *0602陽性であれば必ずナルコレプシーになるというわけではありません。遺伝的な素因に後天的な要因が加わった結果、ナルコレプシーが発症するものと考えられています。注3)

ナルコレプシーの対策・治療

ナルコレプシーの睡眠発作は若いうちから発症しますが、単なる居眠りと思って見過ごされ、診断まで何年もかかってしまうことも少なくありません。ナルコレプシーかもしれないと思ったら、睡眠障害を専門とする医療機関や睡眠障害に詳しい精神科・神経内科を受診しましょう。

ナルコレプシーの診断では、まず睡眠習慣、眠気の程度や情動脱力発作の有無、レム睡眠関連症状などについて問診で確認します。十分な睡眠をとっても、3ヶ月以上毎日のように強い眠気が続き、情動脱力発作がみられる場合はナルコレプシーと診断されます。

情動脱力発作を伴わない場合には、確定診断のために終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と睡眠潜時反復検査(MSLT)を行います。日中に強い眠気を生じる疾患は他にもさまざまなものがあり、中には向精神薬の服用によって過眠が生じる場合もあるため、鑑別には注意を要します。

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

身体の各部にセンサーをつけ、脳波、筋電図、心電図、呼吸の状態、酸素飽和度、胸・脚の動きなどを一晩中測定します。ナルコレプシーの患者さんは寝つきがよく、多くの方は目を閉じてから10分以内に眠り始めます。しかし、眠りが浅く夜中に目が覚めることも特徴的で、睡眠時間の長さが健康な人と同じくらいでもあまり熟睡感が得られません。

睡眠潜時反復検査(MSLT)

PSGの後に睡眠潜時反復検査(MSLT)を行い、昼間の眠気の強さを調べます。20分程度横になり、何分で寝付くかを脳波を通して測定します。通常朝から夕方まで4−5回、測定を繰り返します。
通常は眠りに入るとまずノンレム睡眠になり、その次にレム睡眠になりますが、ナルコレプシーの患者さんは眠りに入った直後、15分以内にレム睡眠に入るケースが多くみられます。眠りに入るまでの平均の時間(入眠潜時)が8分以下であり、眠りに入った直後のレム睡眠が5回中2回以上観察された場合にナルコレプシーと診断されます。

【薬を使わない治療】

  • 生活習慣の改善・睡眠発作時の対応

規則正しい生活を心がけ、睡眠不足にならないようにします。昼食時にカフェインをとったり、昼休みや夕方に15分程度の昼寝をすると、日中の眠気を我慢しやすくなります。車の運転や調理など危険を伴う作業は眠くなりにくい時間帯に行い、睡眠発作が起こったときにはすぐに中止します。

【薬物治療】

  • 中枢神経刺激薬(睡眠発作に対する治療)

現在はモダフィニルが第一選択となります。従来使われていたメチルフェニデート(リタリン)やペモリンは長期使用時の乱用・依存が問題となったため、特にリタリンについては登録医だけが処方できることになっています。なお、ナルコレプシーの患者さんが中枢神経刺激薬を服用せずに車の運転をすると、道路交通法違反に問われるため、注意が必要です。

  • 抗うつ薬(情動脱力発作・睡眠麻痺・入眠時幻覚に対する治療)

情動脱力発作やレム睡眠関連症状(睡眠麻痺・入眠時幻覚)に対しては、三環系抗うつ薬やセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が有効です。

  • 睡眠薬(中途覚醒による睡眠分断に対する治療)

眠りが浅く夜中に目が覚めやすい場合は、ベンゾジアゼピン系などの睡眠薬が処方されます。超短時間作用型よりも短時間型や中間型作用の薬が多く用いられます。

注1)、注2)、注3)
出典:ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン/日本睡眠学会

 

監修:新橋スリープ・メンタルクリニック 院長 佐藤 幹 先生

Photo by reynermedia

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