レム睡眠行動障害の症状、原因と治療【医師監修】

病気を調べる 2017年04月21日(金)

レム睡眠行動障害の症状、原因と治療【医師監修】

レム睡眠行動障害とは

睡眠時随伴症は、睡眠中にみられる病的な現象で、中枢神経の活動亢進に伴う骨格筋の活動や、自律神経系の変化が特徴です。睡眠から覚醒の境界で生じ、各睡眠段階と関係しています。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レム睡眠中には眼球が急速眼球運動(Rapid Eye Movement)がみられることから、その頭文字をとってREM(レム)睡眠と呼ばれます。
睡眠障害国際分類第2版(ISDC2)では、ノンレム睡眠からの覚醒障害と、レム睡眠に関連する睡眠時随伴症などに分類されていましたが、睡眠障害国際分類第3版(ISDC3)では、全てを睡眠時随伴症とし、ノンレム睡眠から生じるもの、レム睡眠から生じるもの、その他のものと大きく分類されています。レム睡眠から生じる異常行動を、レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder; RBD)と呼んでいます。

通常のレム睡眠中には、夢を見るなど脳が活発に働いていますが、手足などを動かす骨格筋は緊張が緩んで脱力し、いわゆる金縛りのような状態にあります。ところがRBDでは筋肉の脱力が生じないため、そのときに見ている夢の内容と一致した行動が体の動きとして現れます。寝言や手足を動かすなど軽度のものから、立ち上がって歩き回ったり、激しく動いてけがをするような重症のものまで、さまざまな行動がみられます。

意識障害を伴って頭が混乱しているような、いわゆるせん妄とは異なり、RBDの場合は症状が現れたときに身体を揺すったりするとすぐに目が覚め、異常行動と一致する夢の内容を思い出すことができるという特徴があります。

RBDは50歳以降に発症することが多く、成人全体では0.38%、高齢者では0.5%にみられるといわれています。男性が9割と圧倒的に多いですが、その理由はわかっていません。男性RBD患者では何らかの遺伝素因が関与している可能性が示唆されています。また、パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患を発症する前にRBDが多くみられることが知られています。注1)

レム睡眠行動障害の症状

軽症例では大きな声で寝言を言ったり、寝相が悪いと表現されるような粗大な四肢運動がみられる程度ですが、重症例ではベッドから飛び起きたり、一緒に寝ているベッドパートナーを傷つけるような暴力行為がみられる場合もあります。また、レム睡眠のたびに自分自身の発する声で目が覚めてしまうこともあります。REM睡眠自体は睡眠後半(朝にかけて)多く出現しますが、異常行動の出現時間には個人差があり、夜間どの時間帯にも出現し得ます。

RBDの症状は悪夢に伴う激しい異常行動ばかりではなく、ときには笑ったり歌ったりというような行動もみられるため、単なる寝ぼけと思われることも少なくありません。毎晩のように起こる場合もあれば、ごくたまにしかみられないケースもあるなど、頻度もまちまちです。

RBDは症状が軽度であれば必ずしも治療の必要はありません。睡眠に関連して本人が怪我をしたり、他者に危害が及ぶような行動があるかどうかということが診断基準のひとつとなります。

レム睡眠行動障害の原因

レム睡眠や筋緊張と密接に関わる脳幹部、特に橋背外側被蓋部に何らかの障害があることが、RBDの原因の一つと考えられています。
通常のレム睡眠中は、大脳から脊髄への運動系の神経伝達が抑制されるため骨格筋の緊張がなくなって脱力した状態になり、身体を運動させるための筋肉は動かすことができません。しかし、RBDでは脳幹部(大脳と脊髄の間にあります)で神経伝達の抑制がされないため骨格筋が脱力せず、夢の内容そのままに身体の運動が行動として現れると考えられています。

RBDの発症後、パーキンソン病やレビー小体型認知症、多系統萎縮症(multiple systemic atrophy: MSA)などα-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積による神経変性疾患の発症が多くみられることから、近年ではα-シヌクレイノパチーの前駆症状として重要視されるようになっています。したがって、特に高齢者にRBD症状が出現した場合には、パーキンソン症状や幻視、物忘れなどの症状が合併していないかを観察する必要があります。また、側頭葉てんかんや、せん妄との鑑別が困難なことがあり、詳細な診断をつけるためには、終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。

RBDを悪化させるものは、心理的ストレスとアルコールの他に、三環系抗うつ剤や選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)、モノアミンオキシターゼ阻害薬などの薬剤があります。

レム睡眠行動障害の対策・治療

RBDは症状が軽度であれば治療する必要はありませんが、異常行動によって睡眠が妨げられ、本人やベッドパートナーが怪我をする可能性がある場合には治療を行います。

薬を使わない治療

• 環境を整えて異常行動によるけがを防ぐ
手足をばたつかせたりしたときに当たると危険があるものを寝室に置かないようにし、クッションや緩衝材などを使ってけがを防止します。また、ベッドパートナーと離れて寝ることも検討します。

• アルコールを控え、ストレスをためないようにする
RBDはストレスの蓄積によって悪化する傾向があるため、こうした状況を避けるよう生活習慣を見直します。特にアルコールはRBDの増悪因子であるため、十分に気をつける必要があります。

薬物治療

• クロナゼパム(抗てんかん薬)
RBDの薬物治療で第一に選択されるのは、クロナゼパムというベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬です。神経系の活動を鎮める作用があり、ほとんどの場合は1~2週間の服用で症状が軽減されます。作用機序は、筋弛緩作用、脳幹部のレム睡眠実行系への作用、辺縁系へ働き情緒を安定させる作用、セロトニン系への作用などが推察されていますが、不明です。また、患者さんの8~9割はクロナゼパムだけで異常行動がなくなるという報告もあります。注2)

ただし、ほとんどのケースではクロナゼパムの服用を中止すると再び症状が現れます。また、患者さんが睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併している場合、高齢者で転倒の可能性がある場合などには、クロナゼパムの筋弛緩作用を考慮して、メラトニンや抑肝散など他の薬を使うことも検討します。

• プラミペキソール(パーキンソン病治療薬)
クロナゼパムで効果が見られない場合は、プラミペキソールという薬を使うことがあります。プラミペキソールはパーキンソン病の治療に用いられるドーパミン作動薬のひとつで、RBD患者さんの約7割に有効であるとされています。一方で、悪化したという報告もあり一定の評価は得られていません。

• メラトニン
睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌は年齢とともに少なくなります。特に、夜間のメラトニンの分泌量が低下している高齢のRBD患者さんに対して、寝る前にメラトニンを投与したところ、約90%の方に効果があり、明らかな副作用はみられなかったとの報告があります。注3)

注1)、注2)出典:ねむりとマネージメント 2(1):14-17, 2015
注3)出典:科学研究費助成事業「レム睡眠行動障害の病態の解明とメラトニン療法の確立」2003年度研究成果報告書概要

監修:新橋スリープ・メンタルクリニック 院長 佐藤 幹 先生

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