不眠症の症状、原因と治療【医師監修】

病気を調べる 2017年04月21日(金)

不眠症の症状、原因と治療【医師監修】

不眠症とは

「眠ろうとしてもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」など、いわゆる不眠を訴える方は少なくありません。症状や原因はさまざまですが、多くの場合は数日から数週間程度でまたいつものように眠れるようになります。ところが、夜間の睡眠が充足していない状態がいつまでも改善しないと、昼間の眠気や倦怠感、集中力の低下など、さまざまな不調のため日常生活に支障をきたすようになります。

不眠症とは、このような長期にわたる夜間の不眠が少なくとも1ヶ月以上改善しないこと、そのために日中に心身の不調を覚え生活の質が低下すること、この2つがともに認められる状態をいいます。
不眠症状が慢性化する要因として、性格、誤った睡眠習慣、睡眠についての誤った知識、睡眠についての厳しい自己評価、などが挙げられます。眠れないことが不安で仕方がない、眠気はあるのに眠れない、ベッドの中で徐々に冴えてくるなどといった訴えの背景には、生理学的に交感神経が過剰に興奮している過覚醒という状態があり、過覚醒は不眠症の病態の中心になっていると考えられています。

不眠症の症状

不眠症の症状は大きく4つのタイプに分けることができます。

• 入眠障害

床についてもなかなか眠れず、眠りにつくまでに30分~1時間以上かかるタイプの不眠です。精神的なストレス、強い不安や緊張などがあると起こりやすく、年代による差はあまり見られません。

• 中途覚醒

夜中に何度も目が覚めたり、一度目が覚めるとなかなか眠れなくなるタイプの不眠です。不眠の訴えとしてはこのタイプがもっとも多く、特に中高年で際立っています。

• 早朝覚醒

起きようとする時刻よりも2時間以上早く目が覚め、その後眠れなくなるタイプの不眠です。高齢者に多くみられます。

• 熟眠障害

ある程度眠れてはいるものの、熟睡感がなく眠りが浅いと感じるタイプの不眠です。他の3つのタイプのいずれかを伴うことも少なくありません。

不眠症の原因

環境面の要因

• 時差のある地域への移動(時差ぼけ)
• ベッドや枕が変わる
• 蒸し暑くて寝苦しい、または寒すぎる
• 周囲の音がうるさい、または静かすぎる
• 明るすぎる

身体的な要因

• 加齢(年齢が高くなるほど不眠が多くなる)
• 頻尿(夜間に何度もトイレに行く)
• 痛み、かゆみ
• 薬の副作用

こころの要因

• 仕事や生活における悩み
• 不安や緊張による精神的ストレス
• 長時間労働や極度の疲労などによる抑うつ状態
• 早く眠らなくてはいけないという焦り

生活習慣要因

• 夜遅い時間に飲食をする(特にアルコール・ニコチン・カフェインや刺激物の摂取)
• TV・パソコン・スマートフォンなど、寝る前に強い光を見る
• 寝る直前の入浴やシャワー
• 日中の運動不足

不眠症の対策・治療

不眠はさまざまな原因によって引き起こされるため、それぞれの原因に合わせた対処法や治療が必要です。
上記したように、不眠症状が慢性化する要因として、誤った睡眠習慣、睡眠についての誤った知識、睡眠についての厳しい自己評価、などが挙げられます。ですから、治療は、睡眠習慣の見直し、睡眠についての知識を身につけること、睡眠についての考え方を変えてみることなどを具体化し、そのことにより不眠に対しての不安を取り、生理的な過覚醒を軽減してゆくことを目標としています。
具体的には、薬を使うものとそうでないものに大きく分けることができます。まず睡眠の妨げとなるような生活習慣を見直し、よりよい眠りを得られるように工夫してみましょう。それでも改善がみられない場合には、睡眠を専門とする医師に相談してください。

薬を使わない治療

• 睡眠衛生教育(よりよい睡眠のための生活習慣):睡眠習慣の見直し

1. 毎日同じ時間に起きて日光を浴びる
私たちの体は起きてから14〜16時間ほど経過すると眠くなるようになっています。つまり、早く寝るから早く起きられるのではなく、早く起きると早く眠くなります。休みの日に遅くまで寝ていると体内時計のリズムが乱れる原因となりますが、朝起きて日光や強い光を浴びると体内時計がリセットされ、正しく調整されます。平日・休日にかかわらず同じ時間に起き、日光を浴びるようにしましょう。

仮眠は短時間にとどめ、午後3時以降は控える
どうしても眠いときには、20〜30分程度の短い昼寝をすると頭がスッキリして集中力が高まります。ただし、それ以上長い時間になると深い睡眠に入ってしまうのでかえってよくありません。また、午後3時以降の時間帯に昼寝をすると、夜寝つきが悪くなってしまいます。

2. 適度な運動
ほどよく体を動かした後の心地よい疲労は自然な眠りをもたらします。ただし、限界まで負荷をかけるような激しい運動は、むしろ寝つきが悪くなってしまうことがあります。少し汗ばむ程度の有酸素運動をある程度長い時間行うほうが効果的です。

3. 入浴は寝る2時間前までに
ぬるめのお風呂に入ると副交感神経が優位になり、深い眠りが得られるといわれています。内臓などの深部体温がいったん上がり、その後時間が経って身体の末端から熱が放出されると自然に眠りに入ることができます。ただし、身体が冷めないうちは逆に寝つきが悪くなるので、寝る2時間前までにお風呂から出るようにしましょう。

4. 睡眠時間の長さや就寝時刻にこだわらない
必要な睡眠時間には個人差があります。早く寝なければいけないと思うとかえって目が冴えてしまい、寝つきが悪くなることもあります。眠気がないときはいったん布団から出て、眠くなってから床につくのもひとつの方法です。

5. 寝る前に避けたほうがよいもの
コーヒー・紅茶・緑茶などカフェインを含む飲み物は、就寝4時間前から控えるべきですので、夕食以降は摂らないほうがよいでしょう。喫煙も就寝前1時間前は控えます。また、アルコールも睡眠の妨げとなります。寝酒は入眠直後の眠りを浅くするだけでなく、お酒の量を増やさないと眠れなくなってしまいます。

6. 寝室は環境を整え、眠るときにだけ使う
寝室やベッドの上で寝る直前まで本を読んだり、TVやスマートフォンを見たりすることは好ましくありません。寝室は眠るための部屋、と決めておくほうが自然に眠りにつくことができます。眠らないのであれば別の部屋で過ごし、眠くなったら寝室に入って床につくようにしましょう。
また、睡眠に適した室温は20℃前後、湿度は40〜70%といわれています。エアコンなどを活用して快適な環境を整えましょう。

• 高照度光療法

体内時計を調節して生体リズムを整えるため、太陽光の代わりに2500ルクス以上の強い光を、目標の起床時刻付近に一定時間照射することによって、ずれてしまった睡眠時間帯を矯正する治療法です。

• 認知行動療法(睡眠についての知識を身につけ、睡眠についての考え方を変えてみること)

長年不眠に悩んでいる方たちは、8時間寝ないといけないと意気込んで早く寝室に入っていたり、長時間寝ようと横になる時間を増やしたりすることが多いかもしれません。その結果、寝室に入ることに対して身構えてしまい、リラックスできず眠気がとんでしまったり、眠くないのに横になったまま長い時間を過ごしてしまい、かえって睡眠の質が悪くなっているケースがあります。認知行動療法は、このような睡眠に対しての間違った思い込みや生活習慣を、例えば起床時刻やベッド上で過ごす時間を設定するなどの、より具体的なアドバイスによって改めていく治療法です。

• 薬物による治療

薬を使わない治療だけでは不眠の症状が改善しない場合、医師の診断と指導のもと、必要に応じて睡眠薬(睡眠導入剤)を使った治療を行います。現在広く使われている薬は従来のものよりも安全であり、新しい薬も加わって治療の選択肢が増えています。下記の薬剤は、生理的過覚醒を直接的に軽減することができます。

1. GABA受容体作動薬
GABA(ガンマアミノ酪酸)は脳の興奮を抑える働きをする神経伝達物質です。GABA受容体作動薬はこの働きを促進することで脳全体の鎮静化をはかります。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)の2種類に分けられます。ベンゾジアゼピン系の薬剤には依存性があるため、使用期間や服薬量には注意を要し、医師の指示をしっかり守って使用する必要があります。また、非ベンゾジアゼピン系薬剤も、ベンゾジアゼピン受容体に結合することから、依存性が全くないというわけではありません。非ベンゾジアゼピン系もベンゾジアゼピン系の特徴を一部持っており、誤解を招く可能性があることから、最近では、非ベンゾジアゼピン系薬剤はZ系睡眠薬と呼ばれています。

2. メラトニン受容体作動薬
メラトニンは体内時計の調節にかかわるホルモンで、睡眠と覚醒のリズムを調節する働きをしています。メラトニン受容体作動薬は、脳内のメラトニン受容体に作用しメラトニンと同じ作用をもたらします。メラトニン受容体作動薬は体内時計を調節し、本来の正しい睡眠覚醒のリズムをもたらすことを目的に用いますが、用量を増やすと催眠作用が強くなり依存性の少ない睡眠薬としての効果も期待できます。副作用として日中の眠気(傾眠)が報告されています。

3. オレキシン受容体拮抗薬
最近開発された、依存性のない新しいタイプの睡眠薬です。
脳内物質のひとつであるオレキシンは、覚醒と睡眠の調節に重要な働きをしていることが明らかとなってきています。中でも、覚醒の維持に重要な機能を果たしていることが分かってきました。オレキシンは強力な覚醒誘導物質であり、その機能亢進は不眠症の病態に関与している可能性も示唆されています。
上記したように、不眠症患者は生理的に過覚醒である、つまり寝る間際になっても脳の一部が過剰に覚醒した状態であると考えられています。少し難しい話になりますが、情動に伴う覚醒レベルの上昇には大脳辺縁系からオレキシン産生ニューロンへの入力が関与している可能性が示唆されています。不眠症の背景には眠れないことへの不安があり、その不安(情動)によりオレキシン産生ニューロンが過剰に働き、過覚醒をもたらすというメカニズムが考えられています。
したがって、オレキシン系を遮断すれば、不安−オレキシン系の亢進−過覚醒−不眠という循環を断ち切れるのではないかという考えで、新しい睡眠薬が開発されました。
オレキシンが作用するためには、脳内のオレキシン受容体に結合する必要があります。オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシン受容体への結合をブロック(脳内にある自前のオレキシンと競合)して、不適切に高まった覚醒システムを抑制することで、脳を生理的に覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、結果として眠りをもたらします。
その作用機序から、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較し、自然な眠りが導入できる、ふらつきや転倒のリスクが低い、反跳性不眠(薬を中断した時に生じる不眠)が少ない、依存性が少ないため中止しやすい、などのメリットがあると考えられています。
副作用として日中の眠気(傾眠)などがあります。また、オレキシンが欠損しているナルコレプシーの患者さんには用いることができません。

監修:新橋スリープ・メンタルクリニック 院長  佐藤 幹 先生

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