睡眠時無呼吸症候群のCPAPの治療中断を防ぐには【医師解説】

Interview 2017年09月28日(木)

睡眠時無呼吸症候群のCPAPの治療中断を防ぐには【医師解説】

睡眠時無呼吸症候群のCPAPの治療を中断する患者さんを防ぐには

<ドクターズインタビュー>東京都内に複数の診療拠点を有する医療法人順齡會では理事長の西澤寛人先生が早くから睡眠時無呼吸症候群の診療に力を入れ、2017年からは患者さんの利便性と満足度を高めるために遠隔診療を導入しています。ご自身もCPAPユーザーであり、港区と江東区のクリニックを行き来しながら、遠隔診療を活用してきめ細やかな診療に取り組んでいる西澤寛人先生にお話をうかがいました。
【西澤寛人 先生】
医療法人順齡會 赤坂おだやかクリニック 理事長
(医療法人順齡會 おだやかライフ内科クリニック 院長併任)

CPAPを中断してしまう患者さんはどれくらいいるのか

CPAPで治療を開始した患者さん全体の約5%は継続が難しく、スリープスプリントと呼ばれるマウスピースを使ったOA(Oral Appliance: 口腔内装置)治療に移行する患者さんもいらっしゃいます。CPAPもスリープスプリントも使えないという患者さんはあまりいませんが、睡眠時の無呼吸が重症の場合にはスリープスプリントだけでは改善が難しい部分があり、その点がひとつの課題であると思います。

医療者のきめ細かな対応でCPAPからの離脱はもっと減らすことができる

医療者のきめ細かな対応でCPAPからの離脱はもっと減らすことができる

患者さんがCPAPをやめてしまう理由としては、ひとつには使うのが面倒だということもあるのでしょうが、実は他の病院から私たちのところへ移って来られた方たちを診ていて気がついたことがあります。これは、最近急激に伸びてきた睡眠時無呼吸症候群に対する医療の今の限界なのかもしれないと感じているところでもあります。

医療機器メーカーの広報や営業活動の後押しもあり、睡眠時無呼吸症候群が広く知られるようになったことで、それまでまったく経験のなかった医師が睡眠時無呼吸症候群の治療を始めるというケースも増えてきました。しかしその結果、CPAPを導入はしたものの、使い方の指導が十分行き届いていないということもあるのではないかと思います。

CPAPは使う人に合わせて細かく設定を変更することができます。患者さんによっては初期設定のままでは圧が強すぎたり弱すぎたりすることがありますし、状況によってはある設定項目のオン・オフを切り替えると、もっと呼吸が楽になるような細かな設定が用意されているのです。

ところが、転院されてきた患者さんが使っているCPAPの機械の設定条件を見ると、メーカーが出荷したときの設定とまったく同じだということがしばしばあったのです。本来ならば、患者さんが苦しくて途中で外してしまうようなことがあれば必要以上に圧がかかっていたりすることが考えられるので、設定を見直してみるべきです。

たとえば、息を吸うときには圧がちょうどよくても、息を吐くときには機械から送り込まれる空気と吐く息がぶつかって息をしづらくなります。そこで最近の製品では、息を吐く呼気時に圧を自動的に少し下げる機能がついています。その設定を適切に調整すると、息を吐くときにも苦しい感じがしなくなり、一晩中つけていられるようになったという方も実際にいらっしゃいます。

マスクも多種多様で、口・鼻を覆うものから鼻だけのもの、サイズも大きいものから小さいものまであります。ですから、マスクを替えてみるということも含めてさまざまな提案をすることによって、患者さんが楽にCPAPを続けられるようになると思います。

また、当院ではCPAPのメーカー3社と契約していますので、ある会社の機械が合わなかった場合は別の会社の機械に替えてみるということもできます。保険点数は決まっていますから、患者さんが負担するコストも変わりませんし、実際に別の機械に入れ替えてみたらよくなったという患者さんはいらっしゃいます。

さらに、Travel CPAPといって通常よりコンパクトな製品もあります。小型軽量でかさばらないので出張にも持って行きやすく、使用率も上がるので海外出張が多い方などには喜ばれています。

その患者さんのニーズに合わせた提案をどれだけできるかということによって、CPAP離脱率はある程度低くなると思います。当院では離脱率は2〜5%と非常に低く、むしろ睡眠時無呼吸症候群が改善してCPAPから離脱するというケースがあるくらいです。

かなりの肥満だった方が減量に成功したり、CPAPを使っているうちに喉が少し広がるようになって無呼吸が少なくなることもあります。再検査をして実際に無呼吸低呼吸指数(AHI)が減っているのでCPAPをやめたという患者さんも当然いらっしゃいます。

睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療は安易に行われすぎている

睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療は安易に行われすぎている

レンタルでCPAPを使っている患者さんが保険診療代を払いに来てくれないというような声を病院側から聞くことがありますが、私からみればきちんと診療をしていないから患者さんが来ないという面もあるのではないかと感じます。ただ使用料だけを払いに来させているようでは、やはり患者さんも病院に行く意義を感じないでしょう。

普段から患者さんの話を聞いて、それならばこういう設定にちょっと変えてみましょう、というような提案ができていれば、患者さんもCPAPの調子が悪いから病院に行こう、先生に相談しようという話になるのではないでしょうか。

患者さんからみた場合、どの医療機関がいいのかということは本当にわかりません。私が遠隔診療で診ている患者さんの中でもっとも遠方にいらっしゃるのは福岡の方です。その患者さんはいったん福岡のクリニックに紹介状を出して診ていただいていたのですが、2カ月後に患者さんが飛行機でわざわざ当院に来られたのです。

私が驚いて事情をお尋ねすると、紹介先の医師は患者さんが持って行ったデータを見ようともせず、毎月保険診療代を払いに来てくれればいいと言わんばかりの態度だったというのです。その先生のところにはもう行きたくないと患者さんがおっしゃるので、それなら私が遠隔診察でやってみましょうとご提案して、今は2カ月に1回、福岡との間で遠隔診察をしています。ただし、CPAPの細かい設定などはできないため、患者さんが仕事で東京に出張される時に赤坂に立ち寄っていただき、そこで行うようにしています。

私たちは睡眠時無呼吸症候群の患者さんを医療で幸せにして、さまざまな合併症から救っていかなければいけないと考えて診療にあたっています。睡眠時無呼吸症候群を診ている者の責任として、ビジネスのために睡眠時無呼吸症候群を利用することはやめてもらいたいと思っています。

睡眠時無呼吸症候群の診療を行っているとされる医療機関の一部には、CPAPの設定などは業者さん任せにして、窓口で患者さんからお金をもらってメーカーに使用料を払っているだけというようなところもあることは事実です。

CPAPは保険診療でも1カ月に4,700円ほどかかりますから、それだけのお金を患者さんが負担するからには、もう少ししっかりと適切な医療が受けられるようにしなければいけないと考えています。

当院では虎の門病院睡眠呼吸科の成井浩司先生に顧問になっていただいていますが、私が大学院にいたときから成井先生のことはよく存じ上げていました。私はもともと心臓が専門で不整脈を診ていたのですが、不整脈の発生原因に睡眠時無呼吸症候群が大きく関わっているということを知り、関心を持つようになりました。

まだ睡眠時無呼吸症候群が今のように知られていなかった頃から、血圧が高くてなかなかよくならない患者さんを見つけると、睡眠時無呼吸症候群があるのではないかと片っ端から検査をして、今日まで診療を続けています。経験や知識がない医師までもが睡眠時無呼吸症候群の診療を安易に始めている現状は止めようがありませんが、これでは患者さんがかわいそうだと思います。

遠隔診療導入の背景

遠隔診療導入の背景

患者さんにしてみれば、毎月病院に行くというのは誰しも負担に感じるはずです。毎月1回病院に来てくださいといっても、実際にはなかなか難しいところがあります。本来は毎月診るべきなのですが、実際に患者さんが来なかったときには保険診療の制度上、2カ月分さかのぼって算定できるということになっていますので、私たちのところでは実質的には診察を2カ月に1回という形にしています。

そうすれば私が赤坂だけではなく、江東区南砂町のクリニックにいるときに患者さんを診ることもできます。実際、先日は江東区のクリニックから福岡にいらっしゃる患者さんを遠隔で診察しましたし、その前にはこの赤坂のクリニックからも診ています。遠隔診療では患者さんとつながることができれば、私がどこにいてもいいのです。

私と患者さんとの間に画面があるだけで、対面の診察と変わりはありません。患者さんが遠隔診療のアプリから予約を取ると自動的に予約が入るので、私がパソコンからその日の診療呼び出しをすると、患者さんのスマートフォンでも呼び出し音が鳴ります。患者さんが電話に出るときと同じ要領で出ると、私のパソコン上でも患者さんが画面に出てくるという形です。診療報酬はクレジットカードで決済します。

医療は対面でなければ、という考えの医師もいると思いますが、もうそういう時代ではなくなってくると思います。今や厚生労働省の課長クラスの方たちからも「医療はサービス業」という言葉が聞かれるようになっていますし、私自身もそう思っています。

医療におけるサービスというものを考えると、患者さんに対して上から目線で病院に来なさいというような診療ではなく、いかにその患者さんにもっと病院を利用してもらいやすくするかということに重点を置いていかなければなりません。

私は患者さんの利便性が良くなり、その利便性向上のおかげできちんと通院ができるようになり、健康管理ができるほうが有益だと考えています。逆に時間がなくて病院に行けないから薬をもらえなかったというほうが、よほど健康には不利益です。病院も患者さんの事情に合わせていける部分についてはサービスを強化していけばよいのではないでしょうか。

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