【医師解説】昼間の眠気? 睡眠不足症候群の診断と治療

Interview 2017年08月30日(水)

【医師解説】昼間の眠気? 睡眠不足症候群の診断と治療

【医師解説】昼間の眠気? 睡眠不足症候群の診断と治療

<ドクターズインタビュー>
日中の強い眠気に悩む方も多いのではないでしょうか?ナルコレプシーを疑い受診される方もいるようですが、多くは、自分自身でも気づかない睡眠不足であることが多いようです。
東京女子医科大学病院睡眠科の鈴木真由美先生にお話をうかがいました。
【鈴木真由美 先生】
東京女子医科大学病院 睡眠科

ナルコレプシー?実はほとんどが睡眠不足症候群

ナルコレプシーとは、日中眠ってはならない状況下でも無意識に眠りこんでしまうが、目覚めた後は何事もなかったように元の状態に戻り、しばらくするとまた、「睡眠発作」に見舞われるのが特徴です。笑ったり驚いたりすると全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作」、「入眠時幻覚」や「睡眠麻痺(いわゆる金縛り)」も頻繁に起こります。患者さんは若年層に多く、多くが10~20歳代で発症します。そのため、学校生活や就労で支障をきたすようになり、大学の保健センターや産業医などを通して私たちの睡眠科に来られることが多いです。

ところが、昼間眠くて仕方がないとおっしゃる方を実際に診療してみても、ナルコレプシーと診断される方は多くはありません。そのほとんどが睡眠不足症候群です。しかし、ご自分が睡眠不足だということには案外気づいていません。ご本人は昼間に強い眠気があるから過眠症だと思っていても、実際の睡眠時間をよく聞き、4〜5時間だというような場合、もしくは、休日の睡眠時間が平日の睡眠時間より2時間以上延長している場合、睡眠不足が原因だと思って間違いありません。

日中の眠気はいつから?患者さんのこれまでの生活を振り返る

私はいつもその方の人生の中で普通に生活できていた頃のお話をうかがうようにしています。「そのとき何時間ぐらい睡眠をとっていましたか」「どんな生活をしていましたか」と質問していくと、ご本人も今の睡眠時間が短いということに気がつきます。

必要な睡眠時間は人によって違うので、ナポレオンのようにショートスリーパーの方もいれば、10時間ぐらい寝ないとダメだというロングスリーパーの方もいます。ですから、単なる睡眠不足の方に対しては、「あなたは残念ながらナポレオンのようにショートスリーパーではないのですよ」というところから話を始めます。

たとえば数年前、今のような眠気がなかった頃には睡眠に7時間使っていたとして、その後仕事が忙しくなって睡眠時間が4時間に減ってしまったとします。ちょうど睡眠時間が短くなった頃から日中に強い眠気を覚えるようになっていませんか、あなたの歴史はこうですよね、というふうにお話をしていくと、ご本人も思い当たる節があるということが多いです。

しかし、それと同時に、「周りの人も同じような生活をしているのに自分だけ睡眠が足りないのはおかしい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。それは人によって睡眠時間が違うからですよということをお話しするのですが、それでもやはり半信半疑という方が多いです。

睡眠不足症候群の治療の進め方

睡眠不足症候群の治療の進め方

そこでまず1か月間、私が指示するように睡眠時間を確保していただき、睡眠衛生指導についてもご説明して睡眠日誌に記載していただくようにしています。睡眠時間が長くなると、睡眠日誌の「昼間に眠くなる」という項目にチェックが入る頻度が減ってくるということを実感して、ご自分で認知してもらうということを繰り返していきます。

睡眠日誌の中で普通に生活ができた日を振り返ってみて、睡眠時間を確保するために何をしたか、それにより昼間活動度がどのようにあがったか行動変容を確認し、仕事の業務整理などを提案していくという順序で進めていきます。

それでもなお眠気が2時間おきに起きるような状況が日常的に続くとなると、やはり覚醒障害の疑いがあります。その場合はナルコレプシーなど過眠症の可能性を考え、専門的な検査に進んでいただくという形をとっています。

加えて今はスマートフォンを寝床に持ち込んだり、遅くまでパソコンをしていたりと、夜間に光を浴びすぎる人が多くなっています。夜間からメラトニンという熟睡ホルモンが分泌されていくのですが、強い光を浴びるとそれが低下してしまうため、熟睡できなくなるのです。したがって、若い方の場合は、夜間の光の制限と睡眠時間の確保ができれば、昼間の眠気は改善することが多いです。さらに、やせた若い方でも顔の骨格の問題で睡眠時無呼吸の方がいるため、睡眠時無呼吸のチェックをすることも重要です。

睡眠日誌は、患者さん自身にとって重要

睡眠日誌を記載することは、診療に必要な情報を得るということと同時に、患者さんにも認知してもらうという意味があるため、原本をご本人に返しています。もし通院をやめて私たちのところへ来なくなっても、睡眠日誌が患者さん自身の手元に記録として残っていれば、ときどき思い出してご自身で振り返っていただくことができます。そういった意味でも睡眠日誌はとても有効なツールになります。

体内時計のサイクルがずれる?睡眠覚醒概日リズム障害とは

体内時計のサイクルがずれる?睡眠覚醒概日リズム障害とは

睡眠覚醒概日リズム障害にはいくつかのタイプがありますが、若い方に頻度が多いのが、睡眠相後退症候群です。これは寝る時間が遅い時間にずれていくため夜更かしになり、朝起きられなくなる(起床困難)というものです。

たとえば大学で夜型の生活をしていた学生さんなどは、社会人になったからといって、4月からいきなり朝6時起床のサイクルには適応できないため、出社困難、遅刻、昼間の居眠りなどで就労に支障をきたします。実際に春先から5月頃にかけて、産業医を通じて私たちのところにも睡眠覚醒概日リズム障害の若い方たちがたくさん受診されます。

睡眠相後退症候群の原因とは

睡眠時間帯の遅れる原因のほとんどは、夜遅くまで起きていて、パソコンやスマートフォンを見過ぎていることですが、中には夜遅くまで試験勉強を続けて、夜型になった人もいます。そのうち、寝ようと思っても 寝付けなくなってしまい、朝になりようやく眠りにつくようになり、その結果起床時間が遅れることになります。夏休みや年末年始など長期の休みの後に睡眠相後退症候群になりやすい傾向があります。

睡眠相後退症候群の治療

朝の日光を浴びて、朝食をきちんととるという指導をすることからはじめます。夜早く寝ることよりも、朝起きるところから始めることが大切です。朝の光を浴びた約14時間後にメラトニン(熟睡ホルモン)の分泌が始まります。また、私たちの体には体内時計があり、それにより昼夜に適した生活ができるようになっていますが、実は24時間よりも長い周期で動いています。地球の24時間周期に合わせるのが、朝の光です。体内時計には中枢(脳)の時計と、末梢(身体)の時計があり、筋肉や消化機能がうまく活動するには 中枢時計からの指令を受けるシステムになっています。長時間絶食後、食事をとることは末梢の時計に直接働くルートがあるため、身体の体内時計を動かすために朝食をとることが重要となります。

睡眠相後退症候群で受診される若い方たちの場合は、早く受診していただければ、これら睡眠衛生指導で多くの方が治ります。高照度の光を浴びて体内時計をリセットする光療法が有効です。メラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム)という薬も効果がある方がいます。

私がラメルテオンを処方する場合、通常の用量(1日1回8mg)より少量を投与します。極端に痩せた若い高校生ぐらいの女の子などであれば8分の1のときもあります。ラメルテオンにはメラトニン受容体に作用して体内時計を調節することと、それによる自然な眠りをもたらすという2つの役割がありますが、「体内時計を調節する」ということを実現するには少量で十分です。睡眠薬としては、従来のものに比べると効果が現れるまでに時間がかかるといわれていますが、体内時計を調節するという意味では比較的すぐに効果があり、よく効く方の場合は服用を始めてから数日で睡眠時間帯が移動していきます。

しばらくはずっと服用を続けながら睡眠日誌を記載していただき、生活指導を行なっていきます。生活指導で改善するということは、元の生活に戻ればまたすぐに睡眠のリズムが乱れるということでもあり、それだけ環境因子の影響が大きいということなのです。

朝日を浴びて体内時計をリセットするには?

特に一人暮らしで朝起きられないという方は、窓のカーテンを閉めないで寝るようにしてもらっています。ほとんどの場合はそれでうまくいくことが多いのですが、なかなか改善しない患者さんがいらっしゃいました。「日当たりが悪いのですけど、一応カーテンを開けっ放しにしています」ということでした。その患者さんの照度と活動度を測ってみたところ、朝でも照度が低かったことが判明しました。

そこで、実際に照度計でご自分の家の照度が低いということを認識していただき、どうしたら十分な照度になるか工夫していただいたのですが、結局家の外に出るしかありませんでした。診察室で患者さんを診るだけではなく、その患者さんの生活環境を知っておくということも大切なことだとつくづく思いました。

このような場合は、朝起きたらまず1回外に出ることを勧めています。新聞を取りに行くのもいいでしょう。とにかく外に出れば、たとえ雨でも曇りでも、室内の蛍光灯の下よりは屋外の方が明るいのです。

睡眠覚醒概日リズム障害には光感受性が関係している?

睡眠覚醒概日リズム障害になりやすい人とそうでない人の違いは、よくわかっていませんが、一説には、光の感受性が関係するといわれています。光の感受性をよくするといわれるビタミンB12が効く人もいます。

ビタミンB12は坐骨神経痛などの神経障害などに用いられます。たまたま私の患者さんの中に坐骨神経痛でビタミンB12を服用していた方がおられたのですが、服用をやめた途端に起床時間が遅れるようになりました。患者さんからも薬をやめると、起きずらいというのでビタミンB12を処方したところ、起床睡困難がピタリと治ったのです。

生活指導は6ヶ月続けるのが目安

特定保健指導などでも習慣づけにはおよそ6ヶ月必要だといわれていますので、私が患者さんの生活指導を行うときにも6ヶ月ぐらいかけるようにしています。月に1回来ていただくようにして、それを6ヶ月続けます。

その間は患者さんに寄り添い、睡眠日誌を見ながら「ほら、できるようになりましたね」「じゃあ、ここはもうちょっと頑張りましょう」といって伴走しながら、最終的には卒業するという形になります。そのときには、それまでつけていた睡眠日誌をお渡しして、これからは自分で睡眠日記をつけながら環境調整をしてみてくださいとお伝えしています。

そうすると、それほどドロップアウトする人はいなくなると思います。また、職場が変わったときなどは環境が乱れやすくなるので気をつけていただき、何かあれば早めに受診していただくことが大切です。

非24時間睡眠覚醒リズム障害とは?

症例としては多くはありませんが、睡眠相後退症候群を放置しているとそのままどんどん後ろへずれていってしまい、Non-24-Hour Disorder Resource(非24時間睡眠覚醒リズム障害)と呼ばれる状態になる場合があります。

前述したように、私たちの体内時計は24時間周期より長いので、それを朝の光で毎日リセットする必要があります。もし不規則な生活などのためにリセットしないでいると、どんどんずれていってしまうというのが非24時間睡眠覚醒リズム障害の基本的なメカニズムです。社会生活を送ることが困難になり、また、元に戻すのが難しくなるので、そうならないよう注意しなければなりません。

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