【医師解説】その不眠、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群が原因では?

Interview 2017年08月29日(火)

【医師解説】その不眠、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群が原因では?

【医師解説】その不眠、レストレスレッグス(むずむず脚)症候群が原因では?

<ドクターズインタビュー>
睡眠に関する悩みの原因を調べてみると、その中にはさまざまな睡眠障害や別の病気が隠れていることがあります。レストレスレッグス症候群や周期性四肢運動障害など、専門の医療機関でも遭遇することが少ない特殊な症例を診療している東京女子医科大学病院睡眠科の鈴木真由美先生にお話をうかがいました。
【鈴木真由美 先生】
東京女子医科大学病院 睡眠科

レストレスレッグス症候群とは?

レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome; RLS)は、夜、じっとしていると脚がむずむずして動かさずにはいられない衝動が生じる疾患で、そのためによく眠れなくなることがあります。私たちの睡眠科を受診される方の中では、不眠症と睡眠時無呼吸症候群の患者さんの割合が多く、レストレスレッグス症候群の頻度はそれほど高くありません。しかし、脚のむずむず感が原因で非常に困っておられる方は確実にいらっしゃいます。中には、他の病院で何剤も薬をもらっているのに少しもよくならないといって、私たちのところに来られるケースもあります。

脚のむずむずが不眠の原因

レストレスレッグス症候群という病気の存在を知らない方も多いです。不眠を訴えて受診されるのですが、よくお話をうかがってみると、実は脚のむずむず感が原因で不眠になっているということがあります。その場合は、一般的な睡眠薬を使っていても当然効果に限りがあり、レストレスレッグス症候群の治療をすることが重要です。

患者さんはインターネットで病気の情報を得ている

他の医療機関からの紹介で来られる方もいらっしゃいますが、患者さん自身が当科のホームページを見て来られるというケースもあります。患者さんが本当に困って、ご自分でインターネットなどを駆使して調べた末に、ようやくここにたどり着いたという方も多いという印象を持っています。

医師の間でも認知度が低いレストレスレッグス症候群

レストレスレッグス症候群に関する知識という点では、医師の教育にも少し問題があると思います。今でも、日本の医学教育の中では、睡眠学という臨床教科はなく、睡眠障害は精神科、呼吸器内科、あるいは神経内科の一部などで扱われているだけです。最近では医師国家試験にも出題されるので、レストレスレッグス症候群について、若い医師たちは勉強しています。ところが、我々の年代やある程度以上のベテラン層になると、レストレスレッグス症候群の認知度はかなり低いという状況です。

また、日常診療においても、一般の診療科で患者さんが眠れないことを訴えても、医師はあまりその原因を深く掘り下げようとしない傾向があります。本来の専門領域の診療だけで精一杯なので、不眠を訴える患者さんにはまず睡眠薬を出すという形になってしまっている状況があります。

レストレスレッグス症候群の診断

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レストレスレッグス症候群の診断でもっとも重要なのは、その症状によって脚を動かさずにいられないかどうかということです。症状そのものはむず痒さやほてり感などさまざまに表現されますが、脚を動かしたくなる、あるいは動かすと少し楽になる、夜間増悪し、朝にはその症状は軽快するという方はレストレスレッグス症候群の可能性があります。

レストレスレッグス症候群と合併する疾患

眠っている間に足がピクッと動いたり、ひじが素早く動くような動作を繰り返すために睡眠の質が悪くなる状態を周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder; PLMD)といい、レストレスレッグス症候群に多く合併します。ほとんどの患者さんは自覚がなく、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で診断されます。ご家族がみて「寝ているときにピクピクっと足が動いていた」というような情報がないとなかなか気づきにくい疾患です。

睡眠時無呼吸症候群と周期性四肢運動障害の合併も多く、睡眠時無呼吸症候群を疑って終夜睡眠ポリグラフ検査をしたときに、たまたま周期性四肢運動障害が見つかることもあります。睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療をしても熟睡感がない、昼間の眠気が改善しないという場合には、周期性四肢運動障害の治療を併用すると不眠や昼間の眠気が改善します。

レストレスレッグス症候群の耐えがたい症状

患者さんにほとんど自覚がない睡眠時無呼吸や周期性四肢運動障害に対して、レストレスレッグス症候群は意識のある状況での障害です。夕方からなんともいえず脚がむずむずして眠れない、脚を動かさずにいられないといった症状は患者さんにとっては本当につらいものです。患者さんの中には「この脚を取ってほしい」というくらい症状が強い方もいらっしゃいます。

私が実際に診ていたある患者さんは、血液検査で明らかに貧血があったため、話を聞いてみたところ、実は便腺が細く血便だということがわかりました。大腸がんを疑い、検査を受けなければならないのはわかっていましたが、検査台の上でじっとしていることが耐え難いから検査や治療を受けたくないとおっしゃっていました。実はその患者さんは、大腸がんによる出血が原因で貧血になっていて、その鉄欠乏によってむずむず脚の症状が引き起こされていたのです。

もちろん私たちは大腸がんの検査や治療が優先だということをご説明しましたが、患者さんご本人にとっては、脚のむずむず感をなんとかしない限りとても検査や手術を受けられないと考えてしまうほど大きな問題だったのです。

結局その患者さんは、大腸がんの手術を受けて貧血が解消されたことによって脚のむずむずもよくなり、私たちも患者さんも手術をしてよかったと喜べる結果になりました。

レストレスレッグス症候群の原因は?

レストレスレッグス症候群は、脳内伝達物質のひとつであるドパミンの働きが悪くなることによって起こるといわれています。また、鉄分が不足すると脳内のドパミンの働きが悪くなることもわかっています。鉄分が不足している方の場合には、鉄を補充することによってドパミンの働きがよくなり、脚がむずむずする症状もよくなっていくと考えられます。

腎機能の悪い方や妊娠中の方、過多月経の人などは鉄が不足しがちです。高校生の女子で、下肢をさすり続けないと寝られない、足だけでなく 手や身体を動かさずにいられなくなってちっとも落ち着かないという方が受診されたことがあります。このくらいの年頃にはダイエットや生理不順などで鉄が少なくなっていることがあるため、血液検査をしてみるとやはりそうだったということがありました。

ただし、ここでいう鉄の不足は一般的な検診の血液検査だけではわかりません。フェリチンといって、貯蔵鉄の量をみる必要があります。一見すると健康そうで貧血の心配がなさそうな方でも、調べてみると貯蔵鉄が枯渇していることがあるので注意が必要です。

レストレスレッグス症候群の原因となる疾患

レストレスレッグス症候群の原因となる疾患

ご高齢の方の場合に見逃してはいけないのは、脊椎管狭窄症など他に原因があるかどうかということです。他に原因となる疾患がある場合を二次性ともいいますが、レストレスレッグス症候群の診断の際には除外しなければなりません。
首や腰の状態を確認して、整形外科領域で何か病気がないかということを必ずチェックします。高齢になるほどレストレスレッグス症候群の発症は多くなりますので、他に病気を持っている方も当然多くなります。

レストレスレッグス症候群の症状を改善する方法

まずはじめに行う大切なことは生活指導です。脚のむずむず感には座ってじっとしていることが一番よくないので、ストレッチをしたり、ぬるめのお湯でよく温めると症状が改善する場合があります。

カフェイン、アルコール、喫煙は増悪に関与しますから、控えることが大切です。症状を気にすると症状が強くなることから、症状出現時に、ほかに気をそらすことも有効です。

症状の現れ方には個人差もありますが、季節や気温によって症状の程度が変わる方がいます。夏になると悪くなるという人もいれば、逆に冬になると悪くなるという人もいます。夏になると悪くなるという方の場合は、暑くなると余計に脚がほてってしまうので、冷たいシャワーで冷やすとむずむず感がおさまることがあります。また、タイルの上で足を冷やしたり、眠るときに足を布団から出しておくことも有効です。軽症例は これら生活指導だけで緩和されます。

レストレスレッグス症候群の薬物治療

前述のように、鉄欠乏の状態では、鉄の補充から治療を始めます。妊婦さんなどの場合は、妊娠期間中だけ鉄を補充していればよく、赤ちゃんが生まれてしまえば何事もなかったように治ることも経験します。

レストレスレッグス症候群は、ドパミン作動薬が有効な場合が多く、広く使われています。鉄欠乏のない場合、ドパミン作動薬から開始することが多いです。

ただし、レストレスレッグス症候群は単一の疾患ではなく、あくまでも症候群です。脳内のドパミン系機能障害が関連すると考えられていますが、GABA系といって、ドパミンとは別の脳内伝達物質に作用する薬物が有効な方もいらっしゃいます。それは治療を始めてみないと実際にはわかりません。

第一選択としてドパミン系に作用する薬で治療を行い、それでも効果がみられないときにはGABA系に作用する薬を使ってみるとよく効くという場合もあります。治療困難の患者さんにはドパミン系とGABA系の両方の薬を使っている方もいますし、保険適用外でさらに強い薬を使う場合もあります。

睡眠衛生指導(睡眠に関する生活指導)の重要性

私の患者さんの中に高校生で極端な偏食のお子さんがいました。学校生活にも差し支えるくらい睡眠障害が強かったので、鉄を補充してもらいながらレストレスレッグス症候群の治療を機会に偏食を直してもらうよう生活指導をしました。お母さんが「生まれたときからの偏食」とおっしゃるくらいで、たくさんの病院を転々として来られたのですが、私たちのところで検査をしたところ、鉄もかなり不足していました。

本人はサプリメントで栄養を摂ればいいという考えを持っていたので、食べ物から必要な栄養素を摂取するという、いわゆる「食育」から指導を始めていきました。最初のうちは渋々従っていた彼女も、鉄を補充しながら私が勧めた体操などを試しているうちに、少しずつ学校生活も普通にできるようになってきました。当初は試験を受けることもできないような状態だったので進学が心配だったのですが、大学受験も無事合格することができました。

睡眠衛生指導はとても重要で有効です。睡眠障害の治療は睡眠衛生指導がベースになると思っています。それができた上で、それでもよくならない方については、さらに何が原因なのかを考えていくという順序であるべきだろうと考えます。

もちろん、うつ病などの精神疾患によるものやそれ以外の神経内科領域の病気特有の睡眠障害というものはありますが、睡眠外来にいらっしゃる方の場合には、睡眠衛生の面で不適切な生活習慣であるということがかなり多いと感じます。

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