【医師解説】中枢性睡眠時無呼吸症候群とは?原因と治療

Interview 2017年08月10日(木)

【医師解説】中枢性睡眠時無呼吸症候群とは?原因と治療

【医師解説】中枢性睡眠時無呼吸症候群とは?原因と治療

眠っている間に呼吸が止まってしまう病気として近年注目されている「睡眠時無呼吸症候群」。呼吸の異常が起こる原因には中枢性と閉塞性の2種類があります。空気の通り道が狭くなっていびきや無呼吸が起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群は広く知られるようになってきましたが、中枢性睡眠時無呼吸症候群はまだあまり知られていません。中枢性睡眠時無呼吸症候群について、駒ケ嶺医院 睡眠呼吸センター長の髙﨑雄司先生にお話をうかがいました。

【高崎雄司(たかさき ゆうじ)先生】
駒ヶ嶺医院 睡眠呼吸センター センター長
元東海大学健康科学学部教授、元日本医科大学第4内科助教授、日本睡眠学会評議員・認定医、日本呼吸器学会専門医・指導医

 睡眠時無呼吸症候群には閉塞性と中枢性の2種類がある

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断にあたっては、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)という検査をして睡眠時の呼吸と睡眠の質を調べ、無呼吸や低呼吸と呼ばれる異常な呼吸の発生頻度と睡眠の障害の程度から総合的に診断をします。このときに起こる無呼吸のパターンには、大きく2つのものがあります。それが閉塞性(へいそくせい)と中枢性(ちゅうすうせい)です。

閉塞性と中枢性のそれぞれの違いとは?

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閉塞性の睡眠時無呼吸症候群は、呼吸をするときに鼻から入って肺に至る空気の通り道の中で、気道のどこかが狭くなったりふさがったりすることによって無呼吸が起こるものであり、その閉塞が解除されれば呼吸が再開します。

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群が起こる原因としては、扁桃腺が大きいことや骨格的にあごが小さく空気の通り道が狭いことなど、のどの周囲の構造による問題のほか、肥満のため首の周りに脂肪がついて圧迫されるなど、さまざまな理由があります。

一方、中枢性の睡眠時無呼吸症候群は、頭の中の脳幹(のうかん)にある呼吸中枢というところから出される「呼吸をしなさい」という命令が、一時的に途絶えるために息が止まってしまうものです。

中枢性睡無呼吸症候群の原因は?

中枢性の睡眠時無呼吸症候群の場合の脳からの呼吸命令が一時的に途絶える原因としては、心臓が悪くなって血液を循環させる機能が低下する、いわゆる心不全によるものがもっともよく知られています。

脳の中には血液中に含まれる二酸化炭素の量と酸素の量が正常かどうかということを感知するセンサーの働きをしている部分があり、その情報によって呼吸中枢が呼吸の命令を出しています。血液中の二酸化炭素が多くなってくること、逆に酸素の量が少なくなってくることなどで、呼吸が大きくなって肺での酸素の取り込みや二酸化炭素の排出を正常化するのです。

ところが、呼吸によって実際に酸素と二酸化炭素の入れ替えをしている肺の動きと、血液中の二酸化炭素の量を感知している脳のセンサーの間にはいくらかの時間差が生じます。特に心臓が悪くなって血液の循環が悪くなると、二酸化炭素量の情報の脳センサーへの伝達に遅れが生じ、それが原因となって最終的には呼吸が止まってしまうことがあります。

中枢性無呼吸症候群を引き起こす病気の典型的なものは心不全ですが、そのほかにも腎不全や脳の病気などによっても呼吸の異常が起こることがあります。たとえば脳血管障害などによって呼吸中枢にかかわっている脳の一部分が傷つくと、そのことが原因で無呼吸が起こることがあるのです。

閉塞性に比べて中枢性の発症頻度がどれくらいあるのかということは正確にはよくわかっていませんが、おそらく10分の1程度あるかないかといわれています。

中枢性睡眠時無呼吸症候群のもうひとつの原因とは?

中枢性の睡眠時無呼吸症候群を引き起こすのは心不全などの重篤な病気ばかりではありません。たとえば、なかなか寝付くことができず少し寝ては目がさめるということを繰り返し、睡眠の質が悪化すると呼吸を調節する働きそのものが不安定になってしまい、そのために無呼吸が起こるようなケースのほうがむしろ多くみられます。

しかし、このようなケースの多くの場合は治療の対象にはなりません。治療の対象になるのは先に述べたように心臓や腎臓が悪いケースか、もしくは脳血管障害が起こったために異常な呼吸を引き起こしているような場合に限られます。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療

中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療

中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療では、心不全が原因であればまず心臓に対する薬がしっかりと使われているかどうかということが一番重要です。血管を拡げて血圧を下げることで心臓への負担を減らすためには、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬などが用いられます。心臓の働きを助ける強心薬としてジギタリス製剤という薬を使うこともあります。

また、できるだけ心臓に負担をかけないように生活習慣を改善することも大切です。これらがきちんと行なわれているにもかかわらず異常な呼吸が出る場合は、呼吸のほうに注目して治療をしていくことになります。具体的には、夜間在宅酸素療法もしくは持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行います。これは鼻や口に装着したマスクから圧力をかけて空気を送り込み、呼吸を助ける方法です。

閉塞性と中枢性を併せ持つ睡眠時無呼吸症候群

たとえば、構造的にのどが狭くなっている方に無呼吸が起こった場合でも、それがすべて気道の閉塞によって起こっているというわけではありません。ある一部分は中枢性の原因による場合もありますし、またある一部分は閉塞性と中枢性の中間型のような形で出ることもあります。

患者さんの病態が中枢性かそれとも閉塞性かということは、そのどちらが主体であるかということから診断します。したがって、のどが狭いことが主因であった場合には閉塞性ということになります。

しかしそうではない場合、心臓が悪い方たちの一部では、脳からの命令が途絶えたことによる睡眠時無呼吸症候群もたしかに多いのですが、気道の閉塞による睡眠時無呼吸症候群も起こっているという部分があります。ですから、純粋な意味で閉塞性や中枢性と呼べるようなケースは実際にはあまりないともいえるでしょう。

中枢性睡眠時無呼吸症候群も年齢とともに増加

閉塞性、中枢性どちらの睡眠時無呼吸症候群も年齢とともに増えていきますが、その理由はさまざまであり、何かこれといって主体となるようなものがあるわけではありません。ただし、加齢によって脳からの呼吸の命令そのものがある程度弱くなることもあるため、そのことが影響しているという可能性はあります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状は?

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群のほうが症状は出やすいはずなのですが、それでも本人がまったく自覚していないということは少なくありません。10〜20年というような長い期間をかけて少しずつ悪くなるため、なかなか自分自身の身に異常が起こっていると気づかないのです。

しかし、家族や周りの人たちから見ると、TVを観ていてもすぐに居眠りをしまうなど、明らかに普通ではないとわかる場合があります。ですから、周りの人がこのような異常に気づいたときには医療機関に相談するようにしてあげるとよいでしょう。

中枢性睡眠時無呼吸症候群の症状は?

中枢性の場合も、たとえばもともと心臓が悪い方の場合、ご家族が体調を気遣って注意していると、ときどき息をしていないことがあると気づくことがあります。しかし閉塞性の場合と違って特にいびきもかいていないので、見過ごされることがありえます。

しかし、さらに悪くなってくると、心臓に負担がかかりすぎているため横を向いて寝ることもできなくなる場合があります。そこまで悪くなるとさすがに自分自身でも何かおかしいのではないかと思い、病院で検査を受けるという方もいるようです。

睡眠時無呼吸症候群を治療せず放置すると

閉塞性であれ中枢性であれ、睡眠中に無呼吸が起こった後、呼吸を再開するときには脳が起こされてしまいます。それが何度も繰り返されると睡眠の質が悪くなり、日中に眠気を催すということになります。

睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置していた場合、まず問題になるのはこうした日中の眠気が解消しないことによる生活の質の低下です。しかしそれ以外にも、睡眠中に何度も起きたり寝たりを繰り返すため心臓に相当の負担がかかるということも見過ごすわけにはいきません。

このような状態を放置していると、最終的には心筋梗塞や脳梗塞などを起こすことがありえます。つまり、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群を放置すると心臓が悪くなり、また心臓が悪いと中枢性の睡眠時無呼吸症候群を悪化させることにもつながるのです。

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