【医師解説】不眠症対策の悩みを解消!病院の選び方から睡眠薬まで <日本睡眠学会認定医 佐藤幹先生>

Interview 2017年04月14日(金)

【医師解説】不眠症対策の悩みを解消!病院の選び方から睡眠薬まで <日本睡眠学会認定医 佐藤幹先生>

不眠症対策の悩みを解消!病院の選び方から睡眠薬まで

【2017年4月23日更新】

<ドクターズインタビュー>不眠のことで困っていても「どんな病院に行けばいいのかわからない」「病院に行っても睡眠薬を出されるだけなのでは?」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本睡眠学会認定医として、精神科領域の病気や睡眠障害を幅広く専門的に診断・治療している新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤幹先生に、不眠症の診断や治療についてお話をうかがいました。

【佐藤 幹(さとう みき)先生】
新橋スリープ・メンタルクリニック院長
東京慈恵会医科大学付属病院本院精神神経科外来非常勤勤務
睡眠障害を中心に精神科領域全般における診療を行なう。睡眠学を専門とし、過眠症(ナルコレプシー等)、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、時差ぼけなどの研究を行う。特に不眠症に関しては認知行動療法を取り入れた治療法を研究
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医 日本睡眠学会認定医

不眠の悩みは、認定医がいる病院へ

睡眠の悩みでどんな病院に行けばいいかわからないという方は、まず学会の認定医がいる医療機関を選ぶようにするとよいでしょう。私自身も日本睡眠学会の認定医ですが、日本睡眠学会のホームページなどを見ていただくと、学会の認定医が全国のどこにいるかということがわかります。

睡眠を扱っているクリニックはいろいろありますが、主に内科を専門としているクリニックでは睡眠薬や抗うつ剤はあまり出せません。そのため、精神科を求めて我々のクリニックに来院される方がいらっしゃいます。もちろん、現在は内科でも睡眠薬や抗うつ剤を処方していただける医師もいます。しかし、うつに限っていえば自殺などのリスクもあるため、やはり精神科の医師に任せたいというところもあるのではないかと思います。

実際、私のところにもすでに内科にかかっていた、あるいは内科で睡眠薬だけ処方してもらっていたという患者さんはかなり来られています。

不眠治療は、まず薬を使わない方法から

薬を使わない改善方法としては、睡眠衛生指導や、眠くなるまで布団に入らないこと、そして起きる時間を一定にすることが挙げられます。睡眠時間制限法や刺激コントロール法と呼ばれるものです。しかし、睡眠時間自体が少ないと現実的にそうは言っていられません。特に社会人の方の場合、眠くなるまで布団に入らないといっても起きる時間は決まっているので、逆にプレッシャーにもなってしまいます。そうなると少し睡眠薬を使わなければならない場合もあります。

順序としては、睡眠衛生をまず守っていただくようにします。そして、睡眠衛生の修正だけでは改善しない場合には、睡眠薬を使い、睡眠薬を使用しても効果が少ない場合は睡眠時間制限法や刺激コントロール法を試みます。最近では特に若い方の場合、睡眠薬を使うことにあまり抵抗がなく、とりあえずなんとかして寝て明日に備えたいという患者さんも多くなっていますが、安易に薬物治療に頼るべきではありません。

睡眠薬は「必要な時にだけ使う」

	睡眠薬は「必要な時にだけ使う」

就寝直前に眠気がある日は、基本的に睡眠薬は使わないようにします。就寝直前になっても眠気がないとき、または眠気があって布団に入ってもその後20〜30分経っても眠れない、眠気がとんでしまって眠れそうにないというときに睡眠薬を使います。これを頓用(とんよう)といいます。睡眠薬は必要なときにだけ使うということが大事です。

ただし、長年不眠を患っている方の場合には、最初からある程度の期間、薬を使っていただくこともあります。

睡眠薬の副作用や依存性の心配は?

私が診ている患者さんに関して言えば、不眠を主に訴えて受診される方のうち、3分の1から半分程度の方はリピーターとして来られることはありません。ほとんどの方は睡眠薬を1回処方して終わるため、薬に依存するようなケースはあまりありません。たとえば1回の処方で20回分の薬を出すと、その後まったく薬をもらいに来ない方も多いです。あるいは2〜3ヶ月後に来られて、3日に1回程度のペースで使っているとおっしゃる方、出張のときにだけ使っているという方もいらっしゃいます。

いわゆるヘビーユーザーの方は月1回ぐらいの割合で薬をもらいに来ますが、そのような場合は神経症に近い病態であり、神経症の症状のひとつとして不眠が出ている可能性が高いと考えられます。治療期間は年単位になり、数年に及ぶこともあります。もしくは、睡眠時無呼吸症(SAS)など、睡眠の質を悪くするような別の要因が重なっている場合には、睡眠薬だけでは改善しません。原因疾患が治癒するまで、治療期間は長くなる傾向にあります。

睡眠を専門とする医師の間では現在、薬物的な依存が強いといわれているベンゾジアゼピン系の薬は処方しないようにしています。使うのは非ベンゾジアゼピン系の薬か、オレキシン受容体拮抗薬(商品名:ベルソムラ)やメラトニン受容体作動薬(商品名:ロゼレム)といった薬です。

強い不眠の方は睡眠薬を服用しないと眠れないので、その場合はある程度毎日服用してもかまいません。毎日服用しても問題がないように、依存性が少なくリバウンドしないような薬としてベンゾジアゼピン系以外のものを第一選択にしています。

ベンゾジアゼピン系の薬は使い続けるうちに効きが悪くなり、量も増やさなければならなくなるケースが多く報告されています。また、ベンゾジアゼピン系の薬剤は他の薬に置き換えることが難しいため、最近では長期間にわたって服用するという場合も考えて、ベルソムラやロゼレムなど癖になりにくいものを選択するケースが多くなります。

毎日服用する必要のない方の場合は、たとえば仕事がある前の日だけ服用して、週末は自力で眠る日を作るようにします。あるいは1日おきに服用していただくようにすると、自力で眠ることができている日もあるので、心理的にそれほど薬に頼らずにすみます。

しかし、性格的に依存性が強い方も中にはいらっしゃいます。そうすると、たとえば「週5日だけ服用してください」と言っても毎日服用してしまい、すぐに薬をもらいに来ることになります。ですから、そういった方の場合には少し依存傾向があるということに注意を払いながら、必要以上に使わないように念を押しています。

日本では1回に処方できる錠数も厳しく制限されているので、患者さんが薬を毎日服用したかどうかということはわかります。私自身も薬を多めに処方することはせず、患者さんが次回来られるまでの日数から計算してちょうど足りるくらいの数しか出していませんので、どのくらいのペースで服用しているのかということは把握しやすくなります。

睡眠日誌で睡眠の状態と薬の服用状況を把握

	睡眠日誌で睡眠の状態と薬の服用状況を把握

また、不眠の患者さんには睡眠日誌(睡眠表)で睡眠の記録をつけてもらうようにしています。睡眠日誌(睡眠表)には、睡眠薬を使った日に印をつけてもらう欄があり、床についた時間や起きた時間、途中で起きた時間や実際に眠れた時間などを表に記入するようになっています。それを2週間、1ヶ月というように一定期間書いて持って来てもらいます。日誌をつけると患者さんも自分のことがよくわかりますし、逆にそういったものがないと質問をしても曖昧な記憶だけで答えてしまうため、実際の状況が十分に把握できないからです。

ただし几帳面な方の場合には、時間を分単位で正確に書こうとするなどあまりにも細かいところにこだわってしまい、逆に眠れなくなってしまうことになっても困ります。ですから、その都度時計を確認しなくてもよいので、朝起きた時の大まかな印象で書いてくださいとお伝えしています。自分自身の睡眠を長い目でみることによって、少しずつよくなっていることが実感できるというのも睡眠日誌のよい点です。

検査のデータが「良好」でも「不眠症」の場合も

実際に不眠症の方の脳波などを調べてみると、ほぼ全員が自己申告よりも客観的によく眠れています。しかし、それをご本人がどう受け取るかというところで反応が大きく2つに分かれます。「ああよかった、眠れているんだ」と安心する方は不眠症がよくなることが多いのですが、「いやいや、こんなに眠れているはずがない」という方たちは治療に時間がかかるという傾向があります。

「不眠症とは何か」ということを考えるとき、検査をして睡眠のデータが悪くなければそれは不眠症ではないという考えもありますし、検査データが良好でもご本人が「眠れていない」と言っている、その主観を「不眠」というのだという意見もあります。私自身はおそらく後者が不眠というものであり、その状態をいわゆる不眠症の中核として扱うべきだろうと考えています。

睡眠のデータ自体が悪い方たちについては、まず睡眠時無呼吸症(SAS)や周期性四肢運動障害(PLMD)などの可能性を考えなければなりません。そういうものがなくて眠れていない方たちには睡眠薬を使っていくことも必要です。

しかし、実際に眠れているにもかかわらず眠れていないと思い込んでいる方たちをどうするかというところが問題です。こういった方たちは客観的には眠れているので本来ならば睡眠薬はあまり必要ないはずなのですが、その思い込みをどう治していくかというのが非常に難しいところです。

高齢者にみられる睡眠の悩みの傾向

ご自分が眠れていないという思いがどうしても強い方は、健康に不安があり病気ではないかと気になってしまうような、いわゆる心気的(しんきてき)な傾向がある方に多いです。特にご高齢の方に多くみられます。また、これまで長い間不眠で悩んでこられたような方は、SASやPLMDなど別の要因がないかチェックする必要もあります。それらの要因が何もないような方たちは、心気症(hypochondriasis)、いわゆるノイローゼなどに近い不眠症ということになります。

睡眠日誌をつけていただくと、ご高齢の方の場合、眠くなくても早い時間に布団に入っているようなケースがかなり見られます。「年を取ると早く寝るようになる」と思っている方が多いのですが、眠気が来るまでは起きていても構わないのです。たとえば日頃から21時に就床している方達に、「23時まで起きているようにしてみましょう」というと皆さん驚かれるのですが、実際に眠くなるまで頑張って起きているように指導すると、それだけで不眠がよくなる方もいらっしゃいます。

途中で目が覚めてしまうというのは、加齢による変化として当然起こりうることです。そこで中途覚醒や早朝覚醒に対して、どのくらい睡眠薬を使うかというのは難しいところですが、基本的には次の日に眠くて仕方ない、あるいは朝起きて倦怠感が残っているというようなことがなければ薬を使う必要はありません。いったん目が覚めても20分以内に再入眠できれば問題はないので、中途覚醒の回数自体はさほど気にする必要はないでしょう。

不眠だけではなく「過眠」の方も多い

クリニックを受診される方はビジネスマンが中心というわけではなく、高齢者や主婦、学生まで幅広い患者さんが来られています。その中には不眠症だけでなく過眠症の方も意外に多く、授業中に眠ってしまうという学生さんなどもいらっしゃいます。

このようなケースは実は昔からあったもので、必ずしも最近患者さんが増えている傾向とはいえません。眠気のメカニズムがある程度学問的に解明され、新しい薬が開発されたことなどによって、これらの症状に診断がつくようになってきたのです。かつては怠けていると思われていたものの一部が、実は過眠症だったということがわかってきたのです。

また、朝起きられない子どもたちの中には、睡眠覚醒リズム障害、つまり体内時計が狂ってきているようなケースがあることがわかってきました。こうした子どもたちも今では適切に治療することで学校にも行けるようになり、人生を取り戻すことができるようになっています。

ADHD(attention deficit hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)の中には、眠気を訴える子どもたちが多いことが報告されています。臨床をしている中での印象ですが、将来的には、過眠症やナルコレプシー、ロングスリーパー、あるいはDSPS(Delayed sleep-phase syndrome:睡眠相後退症候群)と呼ばれる睡眠周期の延長や睡眠覚醒リズムの遅れなど、それぞれ別のものだと思われていた疾患についても、たとえば脳のノルアドレナリンやドパミンなどの神経伝達物質の分泌の偏りや、神経細胞の機能の個人差などを明らかにすることにより、病態の説明が可能になる時代が来るかもしれません。つまり、一部の過眠症状や睡眠覚醒リズム障害、ADHDなどが別々の疾患ではなく、ひとつの症候群なのかもしれないという仮説を自分なりに立てて患者さんを診察しています。

夜型は必ずしも悪いことではない

記事1写真4

幼児でも遅くまで起きていて平気な子どもはいます。もちろん、20時ぐらいで寝てしまうというような子どものほうが多いのですが、それが教育や環境によるものなのかどうかというところははっきりしていません。おそらくそれは教育よりも、持って生まれた脳の特徴・性質的要素が大きいのではないかと考えています。

また、発達障害の子どもには夜型が多く、宵っ張りのタイプが多いということも知られています。発達障害の例も含めて考えると、理想をいえば、睡眠リズムの個人差を重視し、その人が一番効率よく働ける時間帯を考慮してフレキシブルに出社できるような形が一番よいのかもしれません。もちろん、そういった勤務が可能な企業もすでにあるかもしれませんが、現実的には、標準的な勤務形態の中で縛られてしまうことのほうが多いのではないでしょうか。

日本では一般に「早寝・早起き」が美徳とされていますが、必ずしもそれがすべての人にとってよいとは限りません。夜のほうが効率よく勉強できるという子どもはたくさんいます。私自身も夜中に勉強するタイプでした。ですから、全員に対して一律に朝活や朝練を求めるのは少し強引なのではないかという気もします。早朝も深夜も情報量が少なくなるという点では共通しています。

外来で話を伺っていると、夜型の学生(中学生以降)の多くは、22時頃の時間帯に一度眠気が来てもそれを過ぎると元気になります。その後はどんどん眠気が少なくなり、23時から夜中の2時頃までとても元気になる傾向が見られます。ですから、こういったタイプの方は深夜に仕事や勉強が一番進むのではないでしょうか。

日中の耐えられない眠気を伴う睡眠時無呼吸症(SAS)

睡眠時間は足りているはずなのに昼間眠くてしかたがないという方は、睡眠時無呼吸症(SAS)の可能性もあります。このクリニックでは、SASの簡易検査を行なっています。本来は終夜ポリソムノグラフィー検査という泊まりがけの検査を受けていただき、睡眠中の脳波と呼吸状態をチェックした上で最終的に診断しますが、その場合は一泊入院が必要で、費用も高くなります。SASかどうかはっきりしないグレーゾーンの方には簡易検査として当院で機械を貸し出し、自宅で使っていただくようにしています。

簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要な方は東京慈恵会医科大学附属病院にご紹介して、そこでCPAP(持続陽圧呼吸療法)を行うかどうかを決めるようにしています。

一般的には肥満だと睡眠時無呼吸症になりやすいと言われています。しかし、痩せている人でも、骨格等の問題で無呼吸になるケースも考えられます。

  • 気道の周囲を取りまく舌、口蓋垂、軟口蓋が気道を塞ぐ場合
  • 鼻中隔の変形、慢性副鼻腔炎により空気の通りが悪い
  • 顎が小さい、後退している、上気道の空間そのものがもともと狭い
  • 脂肪沈着や扁桃肥大により喉や上気道が狭くなっている
  • 筋力がなく、気道自体がしっかりしていない

閉塞型の無呼吸はこれらのいずれかの要因で起こりますが、顎が小さいことや鼻中隔湾曲など、顔面の骨格・構造によるケースが多くみられます。日本人は顎が小さいので、痩せてもあまりよくならない場合も多いと考えられます。また、慢性副鼻腔炎のある方は、その治療することによって無呼吸もよくなることがあります。

中高年になってから多くみられるのは、筋力が低下して脂肪が増えるためです。男性の場合、睡眠時無呼吸症を発症している方は20歳の頃と比較すると15〜20kgぐらい体重が増えていることが多いです。また、女性の場合は閉経後に女性ホルモンの減少によって気道の筋力が弱まるため、いびきや無呼吸が多くなります。気道の筋力は鍛えられないので、上気道周りの脂肪を落とすことが有効な方法となります。

睡眠時無呼吸症は、様々な疾患のリスク要因となります。(不整脈がある方は)止まっていた呼吸が再開するときに心臓の拍動が激しくなるため、そのときに不整脈が起こると血栓ができやすくなります。その血栓が心臓の血管に詰まると心筋梗塞になりますし、脳の血管に詰まると脳梗塞になりますので、そのリスクが上がることになります。

また、血圧も上がりやすくなります。朝起きたときに血圧が高いというのは、無呼吸症の方に多くみられます。また、無呼吸症で起床時に頭が痛いのは、寝ている間に酸欠になっているからです。

睡眠の質の改善に加え、こういった重篤な疾患を防ぐためにも、睡眠時無呼吸症の治療は重要です。

佐藤幹先生のその他の記事を読む

■うつ病と不眠症の原因・対策・改善

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

体内時計クイズ ~あなたはどのくらい知っている?~

寝酒はなぜよくないのでしょうか?

整えよう、体内時計。自然な眠りと朝の目覚め。体内時計.jp
Nelture
ネムジム食堂