<ドクターズインタビュー>認知症患者さんのご家族に知って欲しい、せん妄と睡眠障害の関係とは

Interview 2015年09月09日(水)

<ドクターズインタビュー>認知症患者さんのご家族に知って欲しい、せん妄と睡眠障害の関係とは

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65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍であると言われています。この認知症の発症に重大な影響を及ぼしているのが、幻覚などを引き起こす「せん妄」です。

また、睡眠障害はせん妄を引き起こす要因の一つであると言われています。認知症とせん妄、睡眠障害の関係や予防法について、旭川医科大学医学部 精神医学講座・千葉 茂先生にお聞きしました。

旭川医科大学医学部 精神医学講座・千葉 茂先生

――認知症と睡眠障害の関係は深いのでしょうか。

認知症では、睡眠障害が71パーセントと高率にみられることが報告されています。認知症のタイプ別にみると、レビー小体型認知症では89パーセント、アルツハイマー病では64パーセント、その他の認知症では73パーセントに何らかの睡眠障害がみられます。

また、認知症の発症を促進する症状として「せん妄」があります。「せん妄」は聞きなれない言葉かもしれませんが、入院した高齢者の約40パーセントに出現する、医療現場では頻度の高い症状です。

――せん妄とはどのような症状でしょうか。

せん妄とは、数時間から数日のあいだ、寝ぼけたような、意識が混濁する状態です。せん妄になると、自分が置かれている状況(場所、日付・時刻、行動目的など)が分からなくなります。

ですから、入院しているのに「ここは病院じゃない」などと言い出します。時には、興奮とともに幻覚や妄想が現れ、医療スタッフを犯罪者と勘違いして「殺される」とか「そこに誰かいる」などと言うこともあります。

通常、せん妄は一過性に出現し、その後は回復します。しかし、いったんこのような状態になると認知症の発症リスクが高くなります。一方で、認知症の人や認知症の傾向がある人は、せん妄を呈しやすいことが知られています。

――入院によってせん妄が起こりやすくなるのでしょうか。

せん妄は、いくつかの原因が重なり合って発症すると考えられています。すなわち、脳の老化や脳疾患、環境変化による心身のストレス、不眠などが重なり合って発症するというわけです。

高齢者にとっての入院は、環境変化による心身のストレスを引き起こしますので、せん妄の原因になります。病室に医療スタッフの出入りが多いことや疼痛、身体的拘束などは、高齢者の不安や心理的ストレスを増強します。

これらに不眠や昼夜逆転が加わって、やがてせん妄が発症していくのです。

――睡眠障害はせん妄を引き起こす要因となり得るのでしょうか。

せん妄の前段階でほぼ確実に不眠や中途覚醒などの睡眠障害が現れます。また、せん妄の発現時期だけでなく、前段階や、回復期においても睡眠覚醒リズムに乱れが生じていることがわかっています。したがって、せん妄を予防するためには、睡眠・覚醒リズムを保つことがきわめて重要です。

具体的な予防法

――具体的な予防法はありますか。

せん妄の原因を少なくすることが、予防と軽症化にとって重要です。まず、不眠や睡眠覚醒リズムの乱れがあれば、ぜひ解消してください。また、不安やストレスを軽減するように工夫してください。

入院したら、ご家族の付き添いや面会を増やしてください。かわいいお孫さんの面会が効果的であったケースもあります。ご家族や友人の写真を枕元に置くこと、使い慣れた私物(メガネ、タオルなど)を持参させること、病室の照明をある程度保って環境を認知させること、なども効果があります。なお、病室に出入りするスタッフ数は少ない方がよいでしょう。

もしせん妄が発症し、非現実的な行動がみられたとしても、周囲の方々は慌てずに、穏やかに接してあげてください。幻覚や妄想を語っても、否定したり、どうしてそう思うのかなどと追究しないでください。ご本人はさらに不安になるだけですから。

それよりも、妄想や幻覚を柔らかい表情で受け止め、「そう?でも大丈夫だよ」「安心していいんだよ」などと言葉をかけて安心させると、次第に興奮がおさまってきます。

――高齢者はなるべく環境を変えないほうがよいのでしょうか。

そうですね、高齢になってからの転居が認知症やせん妄を引き起こすことがありますので、環境変化には注意したほうがよいでしょう。ただ、環境変化に対して弱いかどうかは、大きな個人差があります。

例えば、若いころに職場の人事異動などで転勤が多かった方や、旅行によく出かけていた方は高齢になっても意外に環境変化に強いんです。若い頃から旅行によく出かけることは、予防法の一つになるかもしれませんね。

【提供:武田薬品工業株式会社

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