体内時計を知ると、医療と生活が変わる?

Medical 2015年05月29日(金)

体内時計を知ると、医療と生活が変わる?

体内時計を知ると、医療と生活が変わる

ドクターズインタビューのコーナーでは、睡眠の専門家である全国のドクターに、睡眠に関する様々なお話を伺います。今回は、時間医学の第1人者である東京女子医科大学東医療センター・時間医学老年総合内科の大塚邦明先生に、ご専門である時間医学と未来の医療について教えて頂きました。

Q 体内時計の仕組みがわかることで医学がどう変わっていくでしょうか。

体内時計の仕組み

A 予防医学として実現できます。どこも悪くない。いまだ病にあらず、未病という状態でここの体内時計だけ乱れていますよと指摘できたら、予防医学が実現できます。

たとえば心臓の時計だけ乱れていますから、このまま放っておくといずれ心筋梗塞などになりますよと言えるようになります。肝臓の時計が乱れていますから、肝不全を起こす可能性がありますよ。

いまから予防しておきましょうと指導や治療ができるようになります。そうすると、すごい進歩ですよね。それが可能になると私は信じています。

Q 大塚先生が治療に当たる際に留意していること、心がけていること、患者さんにアドバイスされることは、どういう内容ですか。

A まず日常生活の改善です。睡眠の質を深くする工夫。不眠の人は非常に多いですからね。不眠への指導をする。それから起きる時刻を一定にするように指導します。

そして食事をきちんと摂る、抜かない。とくに朝ご飯を抜かない。ただ、朝ご飯を抜かないと言うと、昼も夜も同じように食べて朝食べるようになるから肥満になる方がいるんです。

だから、そのカロリーのことも上手に伝えないといけません。朝ご飯をしっかり食べましょうと言うとどんどん太っちゃう。

朝に1日のカロリーの5割を食べたら、昼には3割、夜には2割というように配分できると良いんです。その次には、運動をしていただくように指導していきます。たとえば散歩をするならば1日のなかでいつがいいのか。いつがいいと思います?

Q 昼から夕方ぐらいでしょうか。夜の運動は、睡眠に悪影響を与えると聞きました。

夜の運動は、睡眠に悪影響

A そうですね。夜遅い時刻の運動は、自律神経のうちの交感神経を高ぶらせてしまいますから、寝つきが悪くなりますね。運動に適した時間帯は2つあります。

ひとつは朝です。朝は光を浴びられます。光を浴びて体内時計をリセットする。メラトニンの分泌を止めるには非常に良いんです。ただ、朝は怪我をしやすいんです。

ですから走ったり、球技をしたり、重たいものを持ち上げたりするのには向きません。軽めの運動をするようにしてください。お散歩ぐらいがちょうど良いんです。

Q 朝の運動は怪我をしやすいというのは覚醒がまだ十分ではないということですか。

A はい。筋力がまだ弱いですし、それから筋の反射とかにもトラブルが起こりやすいです。体温、あるいは脈拍、血圧の状態がまだ激しい運動には向かない時間帯なんです。

朝に散歩程度の軽い運動をするのと良いように、午後3時ぐらいから夕方の7時半ぐらいまでが、運動に適した時間帯であるといえます。

その時間帯には、筋肉がしなやかになり握力が高くなり心肺機能が一番上がり俊敏になり一番怪我をしにくく運動できるということです。

だから、スポーツのためのトレーニングをするときもその時刻が一番良いんです。じつはオリンピックの世界記録が出やすい時刻は、夕方の7時前後なんですよ。

昼間の運動はメラトニンを増やします。よく眠れるようになるんです。だから運動をすると、メラトニンが増えますよと言います。朝は上手に散歩などで軽めの運動をして、夕方前後は上手にお仕事からの帰りなんかを利用して体力を向上するようにしてくださいと指導します。

Q 運動の次には、どんなご指導をなさいますか。

どんなご指導をなさいますか

A 食事の大切さをお話しします。とくに朝食をきちんと摂ることです。そのときにでんぷんなどの糖質に変わる食品を抜かないようにお話しします。糖質はその日の活動を支えるエネルギー源であると同時に、体内時計を朝のスタート時にリセットする効果があります。

ダイエットのためにと思い込んで、糖類や、糖質に変わるでんぷんを含む、ごはんやパンなどを食事から抜く人がおられますが、それはかえって太る原因になります。

体内時計が乱れて、夜の不眠を引き起こすと、睡眠中にカロリーを消費できなくなります。またグレリンとといいうペプチドホルモンが不眠状態が続くと余分に分泌されます。

脳の視床下部に働きかけて、食欲を増進させてしまいます。せっかく朝に糖類を除いたのに、夜にグレリンの過剰な働きで空腹を我慢できなくて、必要のない食事を摂ってしまう原因になります。

不眠になると、レプチンというホルモンの分泌が抑えられてしまいます。レプチンは食欲を抑制するホルモンです。食事を摂ると満腹感を覚えます。

レプチンが脳の視床下部にサインを送り、もうこれ以上は食べなくても大丈夫だぞと知らせるのです。肝臓や筋肉などにエネルギーを消費しろと命令を出します。

つまり、食べる量を低下させてエネルギーが取り込まれるのを抑制し、さらに身体のなかでのエネルギー消費をあげることで、エネルギーの過剰な蓄積を防ぐ働きをします。

レプチンが働き始めるのは、食べ物を口にしてから20分後くらいからです。ですから食事は早食いではなくて、ゆっくりと咀嚼しながら食べることも大切です。

Q そして睡眠の指導をなさるわけですか。

A 何といっても睡眠の大切さでしょうね。眠っている間に、私たちの身体は内分泌系や免疫系を調えて、健康な身体であり続けるように肉体や脳をチューニングしているわけですからね。

しっかり眠ることで、翌朝に活動的な、肉体状態と精神状態になれるのです。体内時計のリセットも睡眠がしっかりとしていないとできません。しっかりと眠るためには、睡眠環境に光を持ち込まないことです。

暗闇を感じると、睡眠を司るホルモンのメラトニンが分泌されて、寝つきをよくして、深い眠りに誘ってくれます。闇はメラトニンにとっては大切な要素なんです。

LED照明のもとで夜の長い時間を過ごさない。パソコンやスマートフォンは、夜には操作しないという工夫が、メラトニンの分泌には欠かせません。

ですから、就寝前には暖色系の暗めの照明で過ごしていただいて、メラトニンをしっかりと分泌させて、良い寝つき、深い眠りに就いていただくようにとお話をします。

お医者さんは、病気のための薬剤を処方するだけではないんです。時間と健康の観点から、生活の改善をしていただくことが、病気の治療効果を高めますし、病気になるのを未然に防ぐことにつながるんです。

生活習慣病を防ぐためには、また生活習慣病を治療するためには、食事、運動という生活習慣に加えて、睡眠という生活習慣も見つめ直していただきたいですね。

第1回 体内時計の発見は1972年。体内時計発見の経緯と時計遺伝子
第2回 私達の心と身体の健康を支える“3つの時計”とは
第3回 なぜ体内時計が乱れると不眠が起こるのか
第4回 体内時計の乱れによる不眠と身体への影響
第5回 体内時計の乱れを防ぐ、朝の過ごし方とは
第6回 夜型の人は、朝型に変われるのか?
第7回 体内時計を考慮して病気をとらえる『時間医学とは』

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【提供:武田薬品工業株式会社

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