なぜ体内時計が乱れると不眠が起こるのか

Medical 2015年05月18日(月)

なぜ体内時計が乱れると不眠が起こるのか

体内時計が乱れると不眠が起こる

ドクターズインタビューのコーナーでは、睡眠の専門家である全国のドクターに、睡眠に関する様々なお話を伺います。今回は、時間医学の第1人者である東京女子医科大学東医療センター・時間医学老年総合内科の大塚邦明先生に、体内時計と不眠について教えて頂きました。

Q 体内時計が乱れることで不眠は起こりますか?

体内時計が乱れることで不眠は起こりますか?

A 体内時計が乱れると不眠になります。朝が来ると目が覚める。夜が来ると眠くなる。それは、お日様が昇るから目が覚めるという条件反射ではなくて、朝の時間が来たから目を覚まそうという時計が働いているわけです。

まさに24時間を把握している体内時計の仕組みですね。眠る仕組みは主に2つあります。体内時計の仕組みと睡眠物質の蓄積です。ずっと起きていると、睡眠物質が貯まってきて脳と身体を眠らせる。

体内時計は、夜になって暗さを感じると、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌させる。その2つがうまく働き合うとよく眠れますし、睡眠の質も高くなります。ですから体内時計が乱れると、24時間のリズムを把握できなくなって、不眠に傾くといえますね。

Q 現代では体内時計の乱れによる不眠が多いのでしょうか。

A 私たちは地球に暮らしている生命であるがゆえに、地球の自転の時間を体内にコピーしたんです。時計遺伝子を作って身体の機能を働かせるのに24時間のどの時間帯で、臓器や分泌系や免疫系を効率よく働かせるかを身体にすり込みました。

睡眠も太陽が沈んだ夜にとるように、体内時計にすり込んだのです。だから、光を浴びることで、体内時計が機能して、目を覚ましているわけです。そういうふうな仕組みでせっかく眠りというものを効率良くとれるように身体にセットしたにも関わらず、ヒトは人工的な光を作り出してしまいました。

エジソンの電球発明から始まり、今ではLED照明まで作ってしまった。ですから明暗がなくなった。日本に絞れば、東京などはシフト・ワークでない人はいないぐらいですよね。

それで眠らない街を作ってしまった。そういうことから生活リズムの乱れが生じて、生活リズムの乱れが体内時計を狂わせている。それが不眠に繋がっています。入眠障害もそうだし、中途覚醒もそうだし、熟眠感欠如もそうですし、早朝覚醒もそうですし、昼間の眠気もそうです。すべてはヒトが自ら起こしてしまったんです。すべての不眠の背景には体内時計の乱れがあります。

私はヒマラヤなどでもフィールドワークを研究しています。ヒマラヤの人たちは電気がないので、太陽が出たら目が覚めるんです。夜は電灯も何もないので真っ暗闇です。

静かに眠るんですヒマラヤの人たちは体内時計が乱れていないので、ほとんど不眠はないんです。そういう事例から考えても、特殊な不眠を除けば生活リズムの乱れが、体内時計の乱れを生み、現代日本の不眠には深く関係していると思います。

現代は3人に1人が不眠、75歳を超えると2人に1人が不眠、そういうことのほとんどが生体リズム異常です。体内時計の乱れによる不眠だといえるでしょう。

Q 睡眠を司るホルモンであるメラトニンは加齢とともに減少しますか。

メラトニンは加齢とともに減少

A ヒトは思春期前ぐらいがメラトニンの分泌量が多いんですが、加齢と共にどんどん減っていきます。60歳になるとだいたい10分の1になります。75歳、85歳になってきますと20分の1、アルツハイマー型認知症の人はメラトニンはまったく分泌されません。ですから、アルツハイマー型の原因の一つにメラトニン欠乏があるのではないかといわれているぐらいです。

加齢とともにメラトニンは著しく減少していきますが、なぜ減るのかについては確証ある結論はまだ出ていません。私はメラトニンが減少するのは、セロトニンからメラトニンになる変換酵素の働きが低下するか、その量が減るからだろうと思います。極端に減りますからね。

Q メラトニンには具体的にはどのような作用があるのでしょうか?

メラトニンは生体時計を調節するという作用があります。メラトニンは脳の松果体から、あるいは十二指腸からも分泌されます。メラトニンが血中に入ると、そのメラトニンが視床下部、視交叉上核の体内時計にありますメラトニン受容体(MT1 MT2)に信号を送ります。

それで、MT1というところが刺激されると睡眠の質が深くなるんです。MT2が刺激されると睡眠の位相が前進する。つまり夜型の人でも、朝方の生活リズムにすることができる。MT1、MT2はそういうふうに役割は別々なんですけど、メラトニンそのものは両方に作用します。

それ以外にも体温を下げる効果がありますので、お風呂上がりに眠りやすいのと同じように体温が下がるとともに自然と眠りに入って行けるという効果もあります。

Q メラトニンの減少を止める工夫はないものでしょうか。

メラトニンの減少を止める工夫

A セロトニンからメラトニンになるわけですから、セロトニンの原料になるようなお食事を摂ると良いでしょうね。タンパク質のなかでも、トリプトファンというアミノ酸がセロトニンの原料になります。

どの食品がとりわけて良いということはなくて、肉や魚や大豆などのタンパク質源を普通に食べるだけで、セロトニンの原料は摂取できます。

また、体内時計の針が乱れているときに、朝、太陽光を浴びると体内時計の針が進んで時計の針が合います。夜ぐっすり眠ることによってメラトニンが十分に出て、体内時計の針を合わせるということがあります。

メラトニンを減少させない工夫としては、まず朝に目覚めたら、明るい外光をたっぷりと浴びて、体内時計を調えるとともに、セロトニンを十分に分泌させることでしょうね。

セロトニンは日中の活動を活発に行えるようにすると同時に、心を落ち着かせる作用を持っています。そのセロトニンが、夜になるとメラトニンへと変わるわけですから、朝には太陽光をたっぷりと浴びること。

食事ではタンパク質を積極的に摂取すること。こうした生活習慣を心がけることで、メラトニンをしっかりと分泌させる身体作りができると思います。晴れた日ではない曇りや雨の日でも、外光は十分に明るくて、体内時計をリセットして、セロトニンの分泌を促すのに効果的です。

第1回 体内時計の発見は1972年。体内時計発見の経緯と時計遺伝子
第2回 私達の心と身体の健康を支える“3つの時計”とは
第4回 体内時計の乱れによる不眠と身体への影響
第5回 体内時計の乱れを防ぐ、朝の過ごし方とは
第6回 夜型の人は、朝型に変われるのか?
第7回 体内時計を考慮して病気をとらえる『時間医学とは』
第8回 体内時計を知ると、医療と生活が変わる?

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【提供:武田薬品工業株式会社

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