体内時計と司るメラトニンの起源

Topics 2015年04月24日(金)

体内時計と司るメラトニンの起源

リラックスする女性

メラトニンは1993年のマサチューセッツ工科大学の実験結果で、睡眠を促すホルモンであると世界中に知られることになりました。メラトニンは人間に特有のホルモンではありません。あらゆる動物にも、植物の中にも存在しているのです。メラトニンは睡眠をとる生き物だけに特有のホルモンでもありません。メラトニンは、地球上に酸素が現れた太古の昔から、あらゆる生命に宿っていたのです。

メラトニンの壮大な歴史

東京医科歯科大学教養部生物学教室の服部淳彦教授は、メラトニンの壮大な歴史を次のように語っています。

「生命が誕生したころの地球には大気がありませんでした。35億年前あたりにシアノバクテリアという原核生命が登場します。原始的な小さな藻です。原核生物とは、細胞核を持たない生物のことです。バクテリアですから、細菌ほどの大きさしかありません」

シアノバクテリアは、それまでの生命と異なって、光合成をして生きながらえたのです。

「二酸化炭素から光によって炭水化物を合成して、それを生命維持のエネルギーとしたのです。光合成は水を分解する過程で生じた酸素を大気中に放出します」

太陽の光エネルギーを利用して、結果的には酸素を吐き出すわけです。酸素は、ふとしたきっかけで活性酸素やフリーラジカルに変身してしまいます。活性酸素やフリーラジカルは、細胞膜を破壊して、生命を死に至らしめます。

シアノバクテリアにしてみれば自分が作り出した酸素によって、自分が傷ついてしまうという皮肉な生命的矛盾が起きてしまっていたのです。

35億年前の生物の体内から発見されたメラトニン

35億年前のシアノバクテリアの仲間は、現在の地球上におよそ1500種類が確認されています。この現代のシアノバクテリアの仲間の体内からメラトニンが発見されているのです。 服部教授は推察します。

「メラトニンには活性酸素やフリーラジカルを除去する能力があります。シアノバクテリアは、メラトニンを体内に合成することで、活性酸素やフリーラジカルから身を守って生きながらえたのでしょう」

シアノバクテリアを始めとする、光合成をする生命が地球上に出現したことで、23億年前あたりには、地球は酸素に覆われて、オゾン層を形成する惑星になったと考えられます。大気に覆われた酸素の充満した地球の誕生でした。紫外線や宇宙線はオゾン層によってバリアが張られて、大気圏内への到達率がグッと減りました。

酸素を吸って生きる生物の登場

そこで、次には酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出す生命が登場します。紫外線の害を受けなくて済む生命たちの登場でした。魚類、両生類、は虫類、鳥類、そしてほ乳類へと生命は酸素のある地球にふさわしい適応性で次々と出現して進化を続けていきます。植物が海洋中に、そして大地に出現したことで、草食性の生き物が現れます。

草食性の生き物は、光合成によって炭水化物を含んだ植物を食べることで効率よくエネルギーを体内に取り込むことができます。肉食性の生き物は、他の動物の体内に満ちている炭水化物はもちろん、糖質、タンパク質、ビタミンなどの栄養を効率よくエネルギーとして摂取することができます。そして酸素を呼吸で取り込み、体内のエネルギーを燃焼させて活動するわけです。

進化を続ける様々な生命の体内には、常にメラトニンが合成されていて、活性酸素やフリーラジカルから自分の細胞が破壊されるのを防ぎ続けたと推測されます。

脳が発達した恒温動物

そのメラトニンは劇的な役割を動物から任されることになります。日本大学医学部精神医学科の内山真教授によると、「数億年前に脊椎動物の中から恐竜や鳥類、ほ乳類などの恒温動物が出現します。エネルギーを燃やし続けることで常に体温を維持する動物です。外気温が低くなると活動ができなくなる変温動物に比べて、環境への適応力は飛躍的に進化しました」いつでも動けるので、捕食(狩り)ができます。

また外敵に襲われたときに逃避することができます。これは人類にも同じことがいえるわけです。

「いっぽうで変温動物に比べると、常にエネルギーを燃やし続けるために、それまでよりも大量の食べ物が必要になりました」

たとえば馬は、今でも活動している1日中、草を食べ続けます。鳥類やほ乳類などの恒温動物は、情報を脳で処理し、判断し、身体を効率よく動かすためにますます脳を発達させました。

脳のエネルギー消費を休息させるための睡眠

脳は大量のエネルギーを消費します。そして1日に摂取する食べ物からのエネルギー量の限界を超えてしまったのです。

「そのために1日のどこかで休息をすることが必須となりました。それが睡眠です」

大脳と肉体を上手に沈静化させ、睡眠中に休息、回復させ、起きたときには高い機能状態の覚醒によって活動する。それが睡眠をとる生き物の宿命となったのです。睡眠に入るための体内時計のスイッチを効率よく切り替える必要が出てきました。

その体内時計のスイッチの役割を、恒温動物たちは、メラトニンに任せたのです。活性酸素やフリーラジカルの除去のために使っていたメラトニンは、脳の真ん中にある松果体で作られ、脳に直接働きかける性質を持っていたため、睡眠と覚醒のリズムを生み出すのに適していたわけです。

脳と身体を維持するために、睡眠は不可欠

こうして、恒温動物たちはメラトニンを使って睡眠をとるように進化しました。その頂点に立つのが私たち人間です。他の動物とは比べものにならない高機能の脳を使ってあらゆる情報を処理し、判断して生きているわけです。脳と身体を維持するためには睡眠は欠かせないわけです。

人間を始めとする昼行性の動物は、太陽が沈んで暗くなる夜に睡眠をとる道を選択しました。ですからメラトニンは夜の暗さを感じると、脳の松果体から分泌されて、体内時計を制御して、夜の眠りにつくように誘うのです。眠らなくても大丈夫とか、不眠不休で働くなどということは、恒温動物である私たちにとっては、とんでもないリスクなのです。脳によって生きている私たちは、良質な睡眠をとることが不可欠なのです。

メラトニンは、私たちが生きていくために、睡眠をとるために欠かせないホルモンであることはぜひ覚えておきたいところです。

参考書籍
『睡眠のはなし – 快眠のためのヒント 』
日本大学医学部付属病院精神科教授/内山真著 中央公論新社
『奇跡のホルモンメラトニン』ラッセル・J・ライター&ジョー・ロビンソン 監修/服部淳彦/聖マリアンナ医科大学講師 講談社
『メラトニン研究の最新の進歩』三池輝久 東京大学教育学部教授 熊本大学医学部発達小児科教授 山寺博史 杏林大学医学部精神科助教授 監修 星和書店

【提供:武田薬品工業株式会社

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