<ドクターズインタビュー> 睡眠薬は頼るのではなく、うまく利用するもの

Interview 2014年10月22日(水)

<ドクターズインタビュー> 睡眠薬は頼るのではなく、うまく利用するもの

睡眠薬

伊藤 洋 (いとうひろし) 先生

日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 院長

ドクターズインタビューのコーナーでは、睡眠の専門家である全国のドクターに、睡眠に関する様々なお話を伺います。今回は、日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター院長の伊藤 洋先生に、不眠症治療と睡眠薬とのつきあい方について教えて頂きました。

第3回 睡眠薬は飲み続けるものではない。

Q 不眠でお医者さんを訪ねると、実際はどんな治療を受けるのでしょうか。伊藤先生は、どんな治療を患者さんにするのですか。

A 不眠症は単に、つまり純粋に不眠症であるケース、神経症という病気があって、そのなかに不眠症を抱えているケース、うつ病があって、そのなかに不眠症を抱えているケース等があり、それぞれへの治療法は異なってきます。でも、不眠の訴えに対しては、私は「眠れないっていうことは好ましいことではないけれど、そんなに心配する必要はないんですよ」とお話します。眠れないことを深刻に考えれば考えるほど、不眠症は治ることから遠ざかりますから。

Q それから睡眠薬についてですが、いったん睡眠薬を飲み始めると、ずっと睡眠薬を飲まないと眠れなくなってしまう心配はありませんか。

A 私たちの病院での治療の場合ですが、だいたい1年以内で、睡眠薬を飲まなくても眠れるようにと、つまり長くても1年後には不眠症から卒業していただくようにと治療しています。もっと早く不眠症が改善されるケースもあります。睡眠薬を飲み始めたら、ずっと飲み続けることは好ましくないという方針です。

Q お医者さんにかかると睡眠薬を処方される事があると思うのですが、睡眠薬は身体に良くないのではないかという意見を聞きます。実際のところは、どうなんですか。

A 現在の睡眠薬の安全性は進歩して、大量服用で死んでしまうなんてことはなくなりました。

Q 芥川龍之介の睡眠薬自殺のイメージがありますが。

A 芥川龍之介が服用したのは、かなり古いタイプの睡眠薬でした。1900年頃に開発された睡眠薬で、死に至る危険がありましたが、1960年代以降には、その危険性が問題視されて使われなくなった睡眠薬です。現在は処方されません。

Q お医者さんに通わなくても、薬屋さんで買える睡眠改善薬が市販されていますよね。

A 若い女性が睡眠改善薬の市販薬を求める傾向が強いようですね。睡眠改善薬として市販されている薬は、抗ヒスタミン薬で、花粉症や風邪の薬と成分は同じです。花粉症や風邪の薬には、眠くなる作用があることを応用したものです。続けて服用すると、耐性ができて、だんだん効かなくなってしまいます。

Q お医者さんで処方される薬とは異なるわけですね。

A 処方薬の睡眠薬と、市販の睡眠改善薬とは、違うものです。ちょっと寝つきが良くないという、不眠症とまではいかない人が、短期間だけ服用して、また日常生活に戻るというのであれば、問題はないでしょう。ただし、不眠の症状が続いているからと、市販薬を何ヶ月も飲み続けるのは、問題です。

伊藤洋

Q それでも、睡眠薬に頼りたくないという気持ちは患者さんたちの思いにあるのではないでしょうか。

A 「睡眠薬に頼る」のは、私も感心しませんね。この病院に取材に来るときに「電車に頼って」病院まで来ましたか。違うでしょう。「電車を利用して」病院まで来たはずです。「電車に利用して会社に行く」のであって「電車に頼って会社に行く」のではないですよね。

睡眠薬も同じです。不眠の症状がある。だったら「睡眠薬を利用して不眠症を乗り越える」と考えるべきです。

Q 睡眠薬を過大に考えないということですか。

A そうです。睡眠薬は絶対なものではなくて、不眠症になっている身体と脳が正しい体内時計のリズムを刻むための助けをする薬です。大切なのは、体内時計が正しく身体と脳とで作動して、快適に眠る、快適に目覚めるという、本来の睡眠と覚醒のリズムを取り戻すことです。

Q 不眠症は「睡眠薬をうまく利用する」ことで、治すことを目指すのですね。

A 不眠症は放置しておくと、様々な生活習慣病の引き金になります。糖尿病とか、高血圧とか、ガンとかですね。たかが不眠と軽く考えるのは間違いですし、不眠症になって眠れなくて人生は真っ暗だと必要以上に重大に考えるのも間違いなんです。不眠症になってしまったら、いずれは治るんだと考えて、専門医を利用してください。

次回は、生活環境と睡眠の関係について、伊藤先生お伺いします。

その他のインタビュー記事はこちら
<ドクターズインタビュー>
日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 院長
伊藤 洋 (いとうひろし) 先生
第1回 睡眠の専門家に聞く、あなたの理想の睡眠時間>>
第2回 分割睡眠は、都市伝説だった。ホルモン分泌を促す睡眠法とは?>>
第4回 都市部で不眠が多い理由とは>>

Photo by Globl Panorama

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

体内時計クイズ ~あなたはどのくらい知っている?~

眠くなってから床につく方がよいのはなぜでしょうか?

正解はこちら
整えよう、体内時計。自然な眠りと朝の目覚め。体内時計.jp
ネムジム食堂