<ドクターズインタビュー> 分割睡眠は、都市伝説だった。ホルモン分泌を促す睡眠法とは?

Interview 2014年10月22日(水)

<ドクターズインタビュー> 分割睡眠は、都市伝説だった。ホルモン分泌を促す睡眠法とは?

寝室の目覚まし時計

伊藤 洋 (いとうひろし) 先生

日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 院長

ドクターズインタビューのコーナーでは、睡眠の専門家である全国のドクターに、睡眠に関する様々なお話を伺います。今回は、日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター院長の伊藤 洋先生に、良質な睡眠を取るための方法に関してお話を伺いました。

第2回 分割睡眠は都市伝説。正しい睡眠法とは?

Q 午後10時は、女性ホルモンや成長ホルモンが分泌される時間帯だから睡眠に就いていた方が良いという話は本当ですか。

A 午後10時という時刻に根拠はないですね。ただひとついえるのは「寝る子は育つ」ということわざがありますが、それは、入眠すると成長ホルモンが盛んに分泌されることによります。成長ホルモンは基本的にはタンパク質を同化させる働きをします。同化の例としては骨の成長や筋肉量の増加が挙げられます。

Q まさに子どものうちは、成長するために必要なホルモンなわけですね。

A 成人してからも入眠から1時間ほどで成長ホルモンは盛んに分泌されます。細胞が再生されますから、その意味ではお肌の細胞の再生と修復のためには、睡眠をとるのは大切だといえますね。

伊藤洋

Q 時刻にとらわれるのではなく、深い睡眠をとることが大切なのですね。

A 眠りについて1時間後に最も深い睡眠状態に入ります。このときに成長ホルモンも最も多く分泌されます。昔から「寝込みを襲え」という言い伝えがあって、人々が眠りについて1時間ほどの時刻は泥棒が入っても起きないくらい深い眠りになっているという事です。坂本龍馬が刺客に襲われたのも、刺客は龍馬が眠りにつく時刻を知っていて、寝込みの時を見計らって襲撃したとも言われています。明け方になると、眠りは浅くなっていきます。だから明け方に侵入する泥棒は捕まりやすかったといいます。成長ホルモンも明け方の浅い眠りのときには、分泌量は減っていきます。

Q 入眠から深い眠りに移行するには、どうすれば良いのですか。

A 睡眠のリズムを整えることです。私たちの体内時計は、明るくなったら、起きるとか、暗くなったから眠るという条件反射ではないんですね。体内時計は受動的なシステムではないんです。自発的に体内時計をリセットしないと、自然に眠り、自然に起きるという睡眠のリズムは整わないんです。

Q 起床したら外光を浴びることが体内時計のリセットには必要だということですね。

A そうです。体内時計に関係しているのは、メラトニンというホルモンです。メラトニンは光を浴びると抑制されて、夜に暗くなると分泌量が増えてきます。朝に起きて光を浴びる。それから16~17時間が経つと、眠くなる体内リズムを私たちは持っています。その時間帯にメラトニンは増えます。だから睡眠にはメラトニンが重要だといわれています。

Q 光を浴びて抑制されるメラトニンは、どうして夜に分泌されるようになるのですか。

A 起床して光を浴びると、セロトニンという物質が体内で増えます。セロトニンは覚醒状態を維持しつつ、精神を安定させる働きをします。このセロトニンが原料となって、夜にはメラトニンが生成されます。起きて活動するために必要なセロトニンが、夜には眠りを促すメラトニンになる。シーソーのバランスのように働くんです。

Q つまり、しっかりと目覚めないと、その夜にはしっかりと眠れなくなるわけですか。

A そうです。起きる時刻を一定にすると、体内時計はきちんと働いて、入眠時刻も一定になります。ところが入眠時刻を一定にしても、起床する時刻は一定にならない。大切なのは、起きる時刻を一定にして、外光を浴びて、体内時計をリセットして整えることなんです。規則正しい睡眠のリズムで入眠すれば、例えば午後11時に入眠すれば、1時間を過ぎた0時頃に、0時に入眠すれば、午前1時頃に、深い眠りについて、成長ホルモンはきちんと分泌されます。

Q 電灯やガス灯の明かりがなかった昔の人は、夕刻に寝て、夜中にいったん起きて、活動して、また眠るという分轄睡眠をしていたとも聞きます。この分轄睡眠を現代に復活させてはどうかという話題がネットのニュースにありましたが。

A 分轄睡眠が良いというのは、都市伝説でしょう。実は睡眠については多くの都市伝説があります。入眠から起床まで目覚めなかった人と、分轄睡眠をした人との睡眠の質の違いを検証したデータはないです。気をつけたいのは睡眠の途中で目が覚めてしまう中途覚醒です。2~3時間で目が覚めるとします。そこでいったん起きて1時間や2時間を過ごすとなると、不眠症の定義になります。夜中に目覚めてもすぐに眠りに戻るのであれば問題はないのですがね。睡眠のリズムの観点からみると、少なくとも成人においては分轄睡眠は不自然です。

Q では、分轄睡眠に限らず、中途覚醒を起こさずに、一定の時間を眠り続けた方が良質な睡眠であるということですね。

A そうですね。睡眠にはリズムが大切です。起床したときに外光を浴びることで、メラトニンの分泌のリズムが整えられ、睡眠覚醒のリズムも安定することは意識して頂きたいと思います。

次回は、不眠症治療と睡眠薬とのつきあい方について、伊藤先生お伺いします。

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日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 院長
伊藤 洋 (いとうひろし) 先生
第1回 睡眠の専門家に聞く、あなたの理想の睡眠時間>>
第3回 睡眠薬は頼るのではなく、うまく利用するもの>>
第4回 都市部で不眠が多い理由とは>>

Photo by Mauro Codella

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