<ドクターズインタビュー> 睡眠の専門家に聞く、あなたの理想の睡眠時間

Interview 2014年10月22日(水)

<ドクターズインタビュー> 睡眠の専門家に聞く、あなたの理想の睡眠時間

伊藤 洋 先生

伊藤 洋 (いとうひろし) 先生
日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 院長

ドクターズインタビューのコーナーでは、睡眠の専門家である全国のドクターに、睡眠に関する様々なお話を伺います。今回は、日本睡眠学会理事長/東京慈恵会医科大学葛飾医療センター院長の伊藤 洋先生に、理想の睡眠時間にまつわるお話を教えて頂きました。

第1回 ショートスリーパーとロングスリーパーで異なる理想の睡眠時間

Q 7~8時間睡眠が理想的といわれていますが、やはり7~8時間は寝る必要があるのでしょうか。

A 現代の多くの平均睡眠時間は7~7時間半くらいです。2000年に実施された100万人を対象にしたガンの罹患調査によると、7時間20分から30分くらいの睡眠時間をとっていた人が、寿命が一番長かった。どうも8時間よりは7時間ちょっとの方が健康的な睡眠時間と言えそうだということになったんです。

Q すると7時間ちょっとが理想の睡眠時間となるわけですか。

A いいえ。睡眠時間には個人差があります。
5~6時間で充分な睡眠時間を確保できるショートスリーパーの人と、9時間以上は寝ないと、日中の生活に支障をきたすロングスリーパーの人がいます。ですから5時間も眠れれば充分なショートスリーパーの人が「自分は7時間眠れていないから不眠症だ」と不安に思う必要はないのです。日中の活動に支障が無く健全に暮らせていれば、健康への被害も起こりません。自分が平均値から外れているから不眠症なのではないかというのは誤った認識なんです。

Q 高齢者になると睡眠時間が短くなるとも聞きますが、問題はないのでしょうか。

A 問題はありません。60歳くらいの人の睡眠時間は、最近の研究では6時間くらいで足りているといわれています。睡眠時間が歳と共に短くなるのは当たり前です。皆さんは人生の3分の1は睡眠に充てる、寝て過ごす、というイメージがありませんか。

Q たしかに8時間は働く時間で、8時間は食事や余暇などの自分の時間で、残り8時間は睡眠の時間で8時間×3=24時間で1日という考えはあるかも知れません。

A その考え方が一人歩きしているのですよ。
1日の3分の1の8時間は寝ないと睡眠不足なのではないかと皆さんが思い込んでしまっているのです。

Q では適切な睡眠時間は人によって異なるということですか。

A そうです。ご本人が「よく眠れたな」と実感でき、日中の眠気で困らないとか、寝不足が原因の頭痛が起こらないとか、仕事や勉強の効率が悪くないということであれば、睡眠不足とも不眠症とも診断しません。睡眠時間の長さにとらわれないことが重要です。

Q 7時間、あるいは8時間寝なければいけないと思い込まないことが大事ということですか。

A そうですね。例えば、都会と地方では、そこに暮らす人の睡眠時間は異なります。

Q 都会には人工的な光があふれているからでしょうか。

A その通りです。都市生活を送るようになって睡眠時間は短くなったといえるでしょう。
100年ちょっと以前は、ガス灯や電灯の光はなかった。夜になると真っ暗になっていたわけで、睡眠ホルモンであるメラトニンが自然と分泌されて、眠りについていたわけです。そもそも真っ暗な環境では活動できないから、眠るしかなかった。それが8時間睡眠という基準を作り出してしまったのでしょう。

伊藤 洋 先生

Q それが理想的な睡眠なのではないでしょうか。

A いいえ、人間は環境に順応しながら生きてきたわけで「睡眠時間を長くするために、都市を真っ暗にしろ」というのは現実的ではないでしょう。都市生活者は8時間睡眠よりも短くても健康に暮らせるように順応しているわけです。氷河期には、人間の睡眠時間はもっと短かったという学説もあります。

Q それはなぜですか。

A 寝るという行動は、動物にとっては危険なのですよ。外敵に襲われる危険があるでしょう。
7時間ほど眠れるようになったのは、人間が外敵から襲われる心配がなくなったからだともいわれています。そのいっぽうで江戸時代などは、人工的な明かりが乏しいから、暗くなると寝ていた。睡眠時間が現代よりも長かったともいわれます。

Q そうして歴史を振り返ると、睡眠時間の文化学が語れそうですね。

A いずれにしても、睡眠時間に「絶対にこれだけ眠らなければならない」ということはないわけです。その人が日常生活で困らなければ、睡眠時間は足りているわけです。

Q 良い睡眠とは、睡眠時間の長さにとらわれるのではなく、睡眠の質が良いか悪いかで判断しるということですね。

A はい。皆さん、良質な睡眠をとってください。

次回は、ホルモン分泌を促す睡眠法について、伊藤先生お伺いします。

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